閻魔様に会えるかも? リアル地獄めぐりが楽しめる長崎・雲仙温泉

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3月16日は何の日だかご存知ですか?正解は「国立公園指定記念日」。1934(昭和9)年のこの日、国内3カ所が初めて国立公園に指定されたそうです。その中の一つ、長崎県雲仙市を漫画家の大原由軌子さん一家が訪ねましたが……、国道脇に地獄が!

 

家族で九州ダイナミック 長崎県雲仙市

メルマガ『大原さんちの九州ダイナミック』を漫画家の妻・大原由軌子と共同配信しているライターの大原広軌が“九州のよか処”をご紹介する不定期連載、今回は長崎県の雲仙温泉をご案内します。

島原半島のほぼ中央に位置し、1934年には日本初の国立公園に指定された雲仙温泉。明治~大正期にかけては上海租界の欧米人たちが数多く避暑に訪れ、「雲仙でひと夏を過ごす」ことが彼らのステイタスとなっていたそうです。

国道脇にすぐ地獄

国道脇にすぐ地獄

しかし我々大原家的には雲仙と言えば「雲仙地獄」、火山性ガスを含む白い噴気が立ち上る様はまさに地獄と呼ぶにふさわしいと聞きます。さっそく訪れてみたのですが……、驚きました。「そんなガスが噴き上がるような“地獄”はきっと山深い場所にあるのだろう」と勝手に想像していたのですが、街の中心部、国道のすぐ脇からガンガンに白煙が上がっているのです。This is dynamic!九州、ダイナミックです。

「大叫喚」「お糸」「清七」などの名がつけられた地獄は30あまり。遊歩道が整備されており、30分ほどで地獄めぐりを楽しむことができます。入場無料、夜間も立ち入ることも可能なのですが、闇夜の地獄に足を踏み入れる勇気は私にはありません。

噴き上がる白煙

噴き上がる白煙

そしてここ雲仙地獄は江戸時代、キリシタンへの拷問が行われ、多くの信徒たちが殉教した地でもあります。地獄から沸き立つ熱湯を柄杓で信者に少しずつ浴びせ、焼けただれた傷を手当てし、再び熱湯を浴びせる――。「雲仙地獄責め」というこの拷問は遠くヨーロッパにまで知れ渡っていたそうです。21世紀の現在、地獄を見渡せる場所に建つ碑が33名の殉教の信徒たちを讃えています。

キリシタン殉教碑

キリシタン殉教碑

そんな雲仙には、ここ数年ほんの少しだけ話題になっているパワースポットがあります。温泉神社の脇に立つ「夫婦柿」。年季の入った立て看板には次のように記されています。

夫婦柿祈願の作法が

夫婦柿祈願の作法が

「夫婦柿(樹齢200年以上)
家内安全 勝運祈願 必願成就 子孫繁栄 恋愛祈願」

すべての物事にご利益があると謳っています。そしてその祈願作法は――

「両手で柿の木をだき二つ一緒にしたから上になで上げ口で唱えながら祈願する 続いて神水をあびる」

とあります。これは祈願しない手はありません。妻と次男坊が試みますが、子どもの体躯では二本の木を同時に抱えるのは厳しかったようです。

夫婦柿

夫婦柿

ここでなにか忘れていることに気づきました。そういえばまだ温泉卵をいただいていません。マニアと言っても差支えないほどに温泉卵に心惹かれる大原一家は、温泉地ではかならず温泉卵を食べてきました。街行く人に伺うと、雲仙地獄の北側入り口付近で女性が露店を出しているとのことで、早足で向かってみると――

温泉卵売りのお母さん

温泉卵売りのお母さん

「雲仙の味 本物 地獄湯けむり温泉玉子」の幟を上げたお母さんが。「本物」というのはどういうことか尋ねてみると、付近の土産店で売られているのは機械で蒸した「偽物」なんだとか。皆さんも雲仙にお越しの際にはご注意ください。

この露天でのお値段はひとつ80円。決してお安いとは言えませんが、普段つましい生活をしている分、旅先では豪気に振る舞いたいというのが我が家風です。4つで300円におまけしていただきその場でほおばってみたところ、白身にきちんと硫黄の香りがしみていて大変おいしい。幼少期は毎夏、母の実家があった東北地方の温泉街で過ごしていた自分は危なく涙を流すところでした。

幕末期には吉田松陰も訪れたという雲仙温泉。地獄めぐりのほかにも湯せんぺいの手作り体験 、懐かしい駄菓子やおもちゃが並ぶおもちゃ博物館などなど、ご家族で楽しめてしまう温泉街に皆さんもぜひ。

 

『大原さんちの九州ダイナミック』

著者:大原広軌(おおはら こうき)
1969年、東京生まれ。フリーランスライター、構成作家。妻は漫画家の大原由軌子。2011年、家族とともに妻の実家がある長崎県佐世保市に移住。現在は夫婦でメルマガを配信しつつ、様々なメディアに寄稿する日々を送っている。
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