米国女子サッカー代表に、アフリカ系選手が少ない理由

2015.07.15
by kousei_saho
reizei
 

女子サッカーワールドカップで3度の優勝を誇る強豪・アメリカ。けれども今年の試合では黒人選手の姿は見えませんでした。アメリカのスポーツ界には競技によって人種障壁はあるのでしょうか。メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の中で、読者からの質問に答える形でその真相が解説されています。

アメリカスポーツ界は競技によって人種障壁があるのでしょうか。

Question

shitumon

女子サッカーのアメリカチームに黒人がいない(ですね?)を見て昔からの疑問を思い出しました。

アメリカ人には聞きにくくて聞いたことがないのですが、アメリカスポーツの人種障壁をどうお考えですか?

プロスポーツでもレスリングとボクシングの差などみていると、単に金の因子(クラブ費やプロの稼ぎ)でなく身体接触度(棲み分け)の因子がそうとうあるような気もしますが。

冷泉彰彦さんの回答

全くゼロではないんです。今回大会では控えに回っていましたが、サッカーの全米女子代表では、シャノン・ボックスというアフリカ系のMFで、かなりの選手がいます。ただ、彼女の場合も育ちは白人家庭なんですね。その点からして、サッカーはアフリカ系のカルチャーとは重ならないということは確かにあるようです。

理由としては、アメリカのアフリカ系女子の場合は「大学バスケットボール」が余りに人気があるために、身体能力の高い子はほぼ全員がこっちを目指してしまうということがあるように思います。小学生から中学生のレベルで、もうこの動きは始まっています。

黒人に人気がないという悩みは野球も同様ですね。ここ10年ぐらい、メジャーリーグで活躍する「アメリカ黒人の選手」が少なくなっているということが問題視されていますが、これも「いい選手はNBAに持って行かれてしまう」という問題が中心だと思います。

身体的接触に関する人種の問題というのは、これはないと思います。男子のアメリカンフットボールは、白人にも黒人にも人気がありますし、プロの場合の人種比率は拮抗していますが、正に「身体接触」があるこのスポーツの場合に、人種の問題が変な形で話題になったことはないように思います。

これは女子のバスケなんかもそうですね。そうした身体接触の問題があるから、スポーツの好みが人種によって異なってくるという現象は、あまりないように思います。

ただ、サッカーに関しては、人口比率に見合うぐらいアメリカ黒人が入って来るようになると、しかも小さい時から鍛えられて来るようですと、これは脅威ですね。今回の優勝で、女子サッカーの人気は上昇中ですから、そうした動きが顕著になるかもしれません。

image by: Wikipedia

 

reizei-p冷泉彰彦のプリンストン通信
著者:冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院卒。米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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