『ママチャリで日本一周中の悪魔』として、日に日に名前と顔が知られつつあるという噂の、大魔王ポルポルさん。高知で天然カツオの塩たたき定食を食べ、愛媛・大洲市で幻の果物「ポポー」を食べ、ママチャリの旅を続けていたと思ったら、いつの間にかしまなみ海道を通り抜け、尾道をなぜか素通りして広島市へ。ここで、ある激辛B級グルメが手ぐすねひいて待っていたようで……。
悪魔が辛さでむせ返る…汗だらだら必至の激辛「汁なし担々麺」
四国をグルッと一周した後、大魔王ポルポルは、しまなみ海道を魔魔チャリ(ママチャリ)で走り続け、やっとのことで尾道に到着。ここで石段や尾道ラーメンでも食べながら旅情に浸ろうと思っていたが、そんなヒマはまったくない。
「とにかく早く九州方面へ向かわなければならん。冬将軍が来てしまう前にな、ガッハッハッハ…」と、少し肌寒くなってきた11月の広島の国道でひとりつぶやきながら、我輩は牡蠣やおたふくソースで有名な広島市へと支配を伸ばそうとしていた。
そして、チャリをこぎ続けること数日、ようやく広島市に着いた。
「ガッハッハッハ!!広島に到着したのだ。貴様らの好きなものを特別に支配してやろう!!がはははは・・」
というメールを魔ぐ魔ぐ(まぐまぐ)に送りつけると、
「では、汁なし担々麺を食べてきてください。なるべく辛いものをお願いします」という返事がきた。
そして、それを「あ……はい。めっちゃ辛いの食べてきてやるわい!!がはははは……」と、二つ返事で承諾。
しかし、我輩は辛いものが苦手だ。
だが、辛いものが苦手であることがバレぬよう承諾した。
魔界一の甘党である大魔王は何を隠そう、キムチは甘いもの派、カレーはカッコつけても中辛どまり、タバスコは眺めるものである。
だから、
(なんで広島で担々麺やねん……)
(広島は中国地方、担々麺は中国じゃーーー!)と思ったのだが、「がはははは」と二つ返事で承諾してしまった。
担々麺を食べに行った日は、ツイッターで我輩のことを知ったニンゲンが「ファンです! 支配してください」と、我輩に支配されに来ていた。
そのため、このニンゲンに1日、写真を撮らせるスタッフ役を任せて、一緒に担々麺を食べに行ったのだ。
我輩が選んだのは、汁なし担々麺の発祥の店である「國松(くにまつ)」というお店だ。
この店は汁なし担々麺の発祥のお店で非常に人気が高く、昼前には長蛇の列ができるほどだ。
「貴様らの口の中をヒーハーさせてやるのだ。ガッハッハッハ!!」と思いながらママチャリを店の前止めると、店は薄暗い雰囲気に包まれていた。店の前に人がいないのだ。そして店の扉には一枚の紙が貼ってあった。
「本日ラーメンスタジアムに出店のため特別定休日とさせていただきます」
「な!な!なんだと!!」
店は、我輩が来るのを察知して逃げたのか。それともラーメンスタジアムへ誘われる運命だったのか。我輩は激しく怒り狂った。
しかし、ここは大魔王。ラーメンスタジアムを支配するため会場へ行くことにした。
ラーメンスタジアム2015は、旧広島市民球場跡地で行われていた。ココには数々のラーメン屋が出店しており、我輩が徳島で征服して、某巨大掲示板で「食べ物で遊ぶな」と叩かれたラーメン東大も出店していた。ラーメンの価格も共通で1杯750円である。國松から会場まではママチャリで10分ほどの距離であった。
しかし、この日は日曜日。おまけに昼間の12時過ぎだ。周りはニンゲンだらけであった。
そのためスタジアムの入り口まで40分以上の待ちで、それから食べたいラーメンの列に並ばなくてはならない。
大魔王といえど、頭から湯気が出るほど怒り狂った。大魔王は並ぶのは嫌いなのだ。
「もう我慢ならん!! 貴様! 別の店を紹介するのだ。ガッハッハッハ!!」と、カメラ役のニンゲンに問い詰めた。
「は、は、はい!! では、僕のおススメのお店に行きましょう・・」と、別の担々麺の店へと案内させた。
ママチャリを市街地から南へ走らせること5分。ついに担々麺の店へたどり着いた。
「こ、こ、ここです!!だいまおうさま……」
そこは、真っ赤に染まった壁に「きさく」と書いていた。
「ガッハッハッハ!!気に入ったぞ。看板に書いてる”きさく”の文字を”まかい“に変えてやろうではないか!」
と言って店に入った。
店内に入ると中は狭く、10人ほどで満席になるような店であった。そしてラーメンの熱気がスゴイのだ。
また、この店は辛さを調整できる。もちろん普通でも辛いのだが、さらに上の辛さを求めるなら、「大辛」という選択もできる。我輩は辛いものが苦手であるが、さっそく汁なし担々麺の麺ダブルの大辛を注文した。
辛いのが苦手なのに麺2玉で1番辛いものを頼む、修行僧のような選択だった。
「さすが……大魔王様!! それは、むちゃくちゃ辛いと評判ですよ!」
「ガッハッハッハ!!と、と、当然ではないか! 魔族であるぞ」
しばらくすると、我輩の目の前に真っ赤な担々麺が運ばれてきた。
紅に染まった担々麺は胡椒の強烈な匂いが立ちのぼる。我輩の五感がやられそうだ。
まず、目が開けられない。鼻からは胡椒の匂いしかしない。
食べるものでも匂うものでもない。そんな担々麺が運ばれてきた。
それを、まずは混ぜずにズルっと口の中に入れた。
「ぐほぉほほほほ!!」
麺が舌に入ると、むせた。そして咳が止まらない。
「だ、だ、だいじょうぶですか!!」と、ファンのニンゲンは心配してくる。
「ガッハッハッハ!! 少し風邪をひいているのだ。がはははは……」と、誤魔化すが箸が進まない。
顔からは汗が出て、舌がしびれて、ついに我輩の五感の全てがマヒしてしまった。
「な!な!なんと力の湧く辛さだ! 胡椒の匂いで舌がしびれ、喉の奥からヒーハーしてくるではないか。がはははは……」
と、我輩はメイクがドロドロに落ちて、説得力のかけらも出ない。
もちろん、麺は細麺でコシがあって噛みごたえがある。とっても旨い。
けれど辛いものが苦手なので、説得力がないのだ。そして、箸は進まない。
ファンのニンゲンは担々麺を10分ほどで完食してしまった。それなのに、大魔王は20分経っても担々麺と睨めっこしている。顔は汗がダラッダラに流れていて、色が溶けている。
そのとき、ファンのニンゲンが、
「あの、それ、僕が食べていいですか?」と訪ねてきた。
「も、も、もちろんではないか……。早く食べぬか」と言うと、ファンである人間はパクパク食べ始めた。
「あぁ。辛いっすねー。パクパク……」
我輩は辛いものが苦手だ。今回の支配は、ニンゲンが来てくれていたから支配できたのだ。
広島に来れば優しい人間に出会える…そう思いながら「き、き、きさま……なかなかやるではないか!! ガッハッハッハ!!」と礼を言って二人で店を出た。
大魔王ポルポルは、辛いものを克服し、口の中をヒーハーさせたので、次なる目的地の山口県へと進んだのだった。
DATA:
きさく
住所:広島市中区舟入川口町5-13
営業時間:
[月~土] 11:00~14:00 18:00~20:00[日] 11:00~15:00
定休日:水曜日
撮影協力:ユウキさん
メルマガ『大魔王ポルポルの日本征服の旅』
著者/大魔王ポルポル
日本一周の旅をしている大魔王ポルポルである。旅の裏側、隠れた小話など話したいことは盛り沢山!! だがしかし! タダで公開はできない。メールマガジンで日本のいろいろなことを掲載するのだ。メルマガに記載のアドレスに悩みや質問を送ってくれればメルマガで公開回答するぞ! ガッハッハッハ!!