これは何かの冗談? 美容室での「失敗カット」は法的に訴えられるのか?

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暑い夏をちょっとでも涼しげに過ごしたい人は、髪型やカラーを変えたり…と何かと必要不可欠な美容院。今回は、その美容院で起こりうる法律相談です。読者からの法律に関する悩みに答えてくれる、『知らなきゃ損する面白法律講座』からお届けします!

美容院での施術に問題があった場合、訴えられる?

□相談□

よく、美容師に勝手に髪を切られたり、施術がひどかったりしたときに裁判を起こしたというニュースをみますが、法的訴えは可能なのでしょうか?予算や方法はどうなんでしょうか?(30代:女性)

□回答□

美容院で自分が伝えていないようなカットをされたり、そもそも施術がひどかったりした場合、裁判に発展するケースはあります。法律的に考えると、美容院と個人の間に、施術を提供するという契約が存在することになります。そして、勝手に髪を切られたりする場合、当事者間で合意していない内容のことを行った結果、客側に損害が生じたと考えて債務不履行に基づく損害賠償請求を行うという構成がありえます(民法415条など)。

一方、相手側(美容院)からの行為によって、権利侵害(髪という身体の一部が失われた)が生じた点を捉えて、不法行為に基づく損害賠償請求という法的構成も考えられます(民法709条など)。いずれの法的構成を採用するかは、証拠関係や訴訟を行うタイミングなど事案によって変わってくることになります。

このように、純粋に法律だけで考えれば、美容院の施術内容に落ち度があって、その結果顧客が不利益を被った場合、損害賠償請求という形で訴訟提起することは可能です。実際の事例として、キャバクラに勤務する女性が希望通りの髪型にならなかったことにより、キャバクラ嬢としての業務に大きな支障が出たとして600万円の損害賠償を求め、美容院を訴えた事件があります(東京地判平成17年11月16日)。この事件で裁判所は、客の希望について十分に確認せずにカットしたことについて落ち度があるとしつつも、その損害は限定的であるとして、美容院側に約24万円の支払いを命じています。

上記のような特別な事情がある場合でも、金額は低くなってしまう傾向があり、弁護士に依頼し正式な訴訟に発展しても費用倒れとなる公算が高いと言えます。

現実的には、しっかりと仕上がりイメージを共有できる美容院を探すこと。万が一、美容院側の落ち度で変な髪型になった場合は、後の対応について当事者間で解決するような交渉を行うことになると思われます。それでも納得が行かない場合は、少額訴訟(請求金額60万円以下の裁判。訴訟の費用としては約6000円。別途弁護士費用などが必要です)を活用するという手法があります。

image by:Shutterstock

 

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