【相場展望】ROEが米独のレベルになれば日本株は2倍になる

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ROEが米独のレベルになれば日本株の価値は2倍になる勘定

『山崎和邦 週報「投機の流儀」』より抜粋

以前に本稿で、ROEこそ、1株当たり純利益と純資産とを含んで構成される指標だから、今後重視されるはずだと強調したことがあった。

その後、ROEを銘柄選定基準とする日経インデックス400が算出され、日銀とGPIFがこれを投資対象に含めた。現に先週は日経平均は上下している間に日経インデックスは週間を通じて5日連騰だった。

だが今、日本企業のROEは先進諸国に比べて異常に低い。

投資家は自分の出資したカネがどれだけ収益を生むかということが本来は最大関心事のはずである。

ROEは米15%、独12%、日本6%、という具合だ。

これは企業がバブル崩壊後の貸し渋りに遭遇して内部留保を積み上げ、防衛を大きくしたからだ。その傾向の出る前、1970年頃から90年ころまではROE20%を維持し、バブル崩壊後でも07年くらいまでは10%台を維持いていたものだ。

今は平均6%だ。本来の企業のアニマル・スピリットが薄れ、いかに貸し渋りに備えたか、その上にデフレで収縮したか、である。

ROEが米独のレベルになれば、日本株の価値は2倍になる勘定だ。

今、市場は主としてPER、補助的にPBRばかりを話題にして(本稿も一般傾向に迎合してその傾向だが)ROEをほとんど“無視”するに近い。

海外投資家が買ってきても短期で売るのは「自分の出資したカネが生む収益の割合(ROE)が低い」ということもあるからかもしれない。

W.バフェットならROEを主眼とするだろう。反対に海外投資家が今は円安のヘッジと抱き合わせで短期投資ばかりに熱中してきたが、ROE重視のスタンスに立ち返れば東京市場の様相も一変する日が来よう。

その場合も筆者ならこう言うであろう。ROEの高い銘柄探しは辞めて、せっかく上場しているJPX日経インデックス400の安値を買い、上がったら売る、これで充分だ、と。現にこれは往来相場の間に4日続伸した。

いつぞや、投資方針に迷っていた読者に「銘柄を探すな。大勢観だけを見て日経レバレッジ(1570)のみの売買に徹してもいい線を行くものだ」とアドバイスしたことがあった。

7年ぶりに高値に来た今でもPBR1倍未満の企業が非常に多い。

「ROE≦資本コスト」だからだ。

リーマンショックの安値の頃には、自己株のテコ入れのための自社株買いが多かった。ときの総理麻生さんは「自社株買いの“5%ルール”を撤廃しよう」と言いだして、東証は直ちにこれに応じた(総理がよくも“5%ルール”なんて知っているなあ、と感心したら、彼は時々、野村総研のR・クー氏と食事していたというから、R・クー氏に聞いたのであろう)。

今の企業行動は違う。経営者は余剰資金を使って資本効率を高めることに目が行き始めたのだと思う。手元資金を厚く貯める企業行動は、長いデフレ期間と往年の貸し渋りに遭遇して“あつものに懲りてナマスを吹く”傾向であったろう。麻生副総理は今度は「守銭奴」と揶揄した。この人は麻生産業の社長で青年商工会議所の会頭を務めた経験があるから、世間が言うほどまんざらバカではない。

『山崎和邦 週報「投機の流儀」』より抜粋
著者:山崎和邦(大学教授/投資家)
野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て、武蔵野学院大学名誉教授に就任。投資歴51年の現職の投資家。著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)など。メルマガ「週報『投機の流儀』」では最新の経済動向に合わせた先読みを掲載。
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