なぜ? 北朝鮮でクーデターが起こらないこれだけの理由

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いつクーデターや反政府デモが起きても不思議ではない状態だと思われるのですが、不思議とこれまでただの一度も発生したことがありません。コリア・レポートの編集長を務める辺真一さんはこれを、洗脳教育などによる国家統制と軍人が闊歩する先軍政治によるところが多いと分析します。

北朝鮮ではなぜクーデターが起きない

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.44より一部抜粋

北朝鮮では1948年の建国以来67年間、韓国発の噂はあっても一度もクーデターも、反政府デモも発生した実例が見当たらない。同じ年に建国した韓国では1960年に学生革命、80年に光州事件(人民蜂起)、87年に民主化闘争と3度、政変に繋がる大規模デモが起き、軍事クーデターも1961年、79年と2度起きたのとは好対照である。

張成沢国防副委員長の処刑、李英鎬軍参謀長の失脚にみられる政権内部の「権力抗争」、それに伴う粛清はあっても民衆デモやクーデターが発生しない理由の一つは、君主(首領)への絶対化と忠誠心を植え付ける思想(洗脳)教育と党が軍をコントロールする唯一指導体系による徹底した国家統制によるところが大きい。

最高指導者を「絶対化」、さらに「神格化」させることで首領及び党への謀反は「不敬」にあたるとの贖罪意識を植え付けさせられる。特に命令に絶対服従の軍人にとっては最高司令官への忠誠心こそが昇進、出世への大前提となる。その証左にこれまで北朝鮮から離反する脱北者は延べ3万人に上るが、軍人では過去最高が上佐(大佐と中佐の間の階級)で、大佐以上の将軍の韓国への亡命は公式的にはまだ一件も確認されてない。

二つ目の理由は、北朝鮮は昔も今も、軍人が闊歩する「先軍政治」の国であることだ。

「先軍政治」の国にあっては、国家予算は軍事優先である。かつて金正日総書記は「我が国では軍事が第一で、国防工業が優先だ。我々が苦労しながら国防力を強化したから良かったものの、そうしなかったら、帝国主義者らにとっくに食べられていた」と語ったことがある。

軍事優先の国家にあって人民軍は労働党と並んで最大の既得権勢力、特権階級に属する。衣食住など生活面、地位保全の面でも優遇され、子弟や親族らの就学や就職、婚姻など将来も一般市民より担保されている。新指導者となった金正恩党第一書記も2012年4月15日の軍事パレードでの演説で父親の金正日総書記の遺訓である「先軍政治」を継承すると誓っている。「民主体制」ならばいざ知らず、軍人が特権を甘受できるよう自ら作った「先軍体制」をひっくりかえす必然性はない。

 

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.44より一部抜粋

著者/辺真一
1947年東京生まれ、明治学院大学英文科卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊、現編集長。毎回驚きの真実をリークするメルマガは人気を集めている。
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