今、日本の大手アパレルである「百貨店アパレル」が危機を迎えています。ファストファッションと呼ばれる安価な小売店舗が主流になり、低迷を続けているのがその理由です。ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが自身のメルマガ『j-fashion journal』で、日本の大手アパレル産業が生き残るための方策について論じています。
日本大手アパレルの危機
日本で「大手アパレル」と呼ばれたのは、百貨店アパレルである。アパレル業界においては、百貨店の比重がそれだけ高かったということだ。
百貨店の売上は低迷を続けている。そして、百貨店アパレルも低迷している。
百貨店の売上が低下するにつれ、百貨店アパレルはSPA化を進めた。駅ビルやファッションビル、SCモールに直営店を展開するようになったのである。
SPAの成長モデルは、店舗の拡大である。店舗を拡大すれば、売上は伸びる。しかし、気がつけば不採算店が増え、店舗は成長エンジンから負債へと変化していった。
おそらくこの問題は、数年前から始まっていたのだろう。しかし、店舗を縮小することは、信用失墜に直結する。そのため、ギリギリまで店舗を維持していたのだ。
その我慢の限界が来たのが2015年だった。大手アパレルは次々と店舗縮小、ブランド縮小を発表したのである。
最早、一般の人々にとって「大手アパレル」は、ユニクロや無印良品、しまむら等の大型小売店を展開する小売企業を連想させるに違いない。そういう意味では、既に「大手アパレル」という概念そのものが消失していると言えるだろう。
中国大手アパレルの危機
日本とは状況が異なるものの、中国の大手アパレルも苦戦している。「世界の工場」と呼ばれた中国だが、人件費の高騰と共に、国際競争力を失っていると同時に、中国市場が成熟し、安価な大量生産商品よりも、高感度の商品のニーズが高まっている。
かつての大手アパレルは、品質の良い大量生産商品を販売することで利益を上げてきた。ヨーロッパでサンプルを購入し、それをコピーし、大量生産大量販売することがビジネスモデルだったのである。
中国80年代生まれ以降の世代は、インターネットにより世界中の情報を入手している。情報の質と量は先進国に住む若者と違いはない。海外旅行にも出掛けているし、世界最高水準の商品、デザイン、サービスに触れているのだ。
一時期は、韓流ブームにより、韓国商品、韓国ブランドが注目されたが、最近では日本への興味がより高まっている。
韓国の製品は装飾的なデザインが多く、中国市場の人気も高かったのだが、表面的なデザインはどの企業も真似できる。そのため、
韓国製品をコピーすると、同質化による価格競争に陥るのである。
一方の日本製品は、デザインはシンプルだが、テキスタイルやパターン、縫製等の技術が優れている。そのため、簡単にコピーすることが難しいのだが、その分、差別化が可能なのだ。
そんな中国大手アパレルの一部は、日本のノウハウを導入することで、問題の打開を図ろうとしている。