人気シンガーソングライターが明かす、作詞という孤独な作業の苦悩

LoloStock/shutterstockLoloStock/shutterstock
 

たとえば落ち込んでいる時に元気をくれたり、ちょっとセンチメンタルな気分にさせてくれたりと、「歌」の持つパワーってすごいものがありますよね。ではその歌詞、皆さんどうやって作っているのでしょうか。吉田照美さんとのユニットなどでも知られる人気シンガーソングライターの小島崇弘さんがメルマガ『小島嵩弘のパウダールーム』でその七転八倒ぶり(!?)を告白していますよ。

作詞。こいつほど厄介なものはない。

どうやってオレの場合作詞してるか?

まず書こうと思う曲のデモテープを何回も何回も連続で聞く。もうメロディーが頭の中を駆け巡るくらい聞く。

そんでデモテープを聞きながら思い浮かぶ情景を浮かべる。

恋愛ものだったら恋をしてるところとか、別れの曲か、思い出の雰囲気か、曲と作詞の世界の接点がどこかを探る。で、ちょっとでも思い浮かんだ言葉、目に付いた言葉、耳にした言葉、ネットの言葉などなど曲の雰囲気と合いそうな世界の言葉をレポート用紙にひたすら羅列する。思い浮かんでは書き、またイマジネーションを広げる。

全く浮かばない時は、いくら曲を聴いても言葉の羅列がレポート用紙3行分の言葉も出ない。まぁ3行出ればいい方だったりする。新聞、雑誌、ネット、手帳のメモ、とにかく思いついた単語を書き並べる

仏像を彫る人が木を見てると、こう掘ってくれって木が言うみたいな話ってあるじゃない? あれみたいな感覚で、この曲は何を言わんとしてるのか想像して構築していくのだ。

オレの場合は空中から言葉をつまんで段々カタチにして行く感覚に似ている。

そうするとアイデアがふと湧いたりする。本当に急に「ふと」なんだ。

その時一気に勝負をかける。この方向で書いちゃえ! とか勢いを大事にする。結果撃沈の時もある。でもここら辺は経験で、こっちで構築して間違いないな?? みたいなことが感覚なんだけどわかるようになってくる。もしくは、あ! こっち行くと出来ない気がするってなってくる。

こうなるまで本当に時間がかかった。10年はかかった。だからオレなんて飛び抜けた才能ないんだよね。

1日座っても作詞1行も出来ないなんてザラで、ふと目にした絵葉書からインスピレーションを受けて出来たり、きっかけはある日急にやってくる。それも「ふと」目にした雑誌の写真とか絵画とか。

全然出来なくて小便に行って小便してたら急に思いついてそれがきっかけで出来たり、ずっと出来なくて考えて考えて外出しなきゃならなくて、ある百貨店のエスカレーターに乗る時にベルトに手をかけた瞬間に「できる!」って思ったりして急に喫茶店に飛び込んで書いたり。本当にどこでいつ降ってくるか、全然わからない。

ずーーーっとそういう状態が続いくんだ。

本当に受験生が勉強のしすぎで頭の中にいつも参考書の文字が浮かんでいるような、そんな感じだ。

作詞の毎日は常に目の前に靄(もや)が、霞(かすみ)がかかっている状況で決して生きた心地がしない。常に作詞の事ばっかり考えてる。そうしないと出来ないんだよね、オレの場合。

『小島嵩弘のパウダールーム』 Vol.199より一部抜粋

著者/小島嵩弘
シンガーソングライターでありラジオパーソナリティの筆者が送る、創作活動の裏側など興味深い話題が満載のメルマガ。パウダールームを覗いてみませんか?
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • 人気シンガーソングライターが明かす、作詞という孤独な作業の苦悩
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け