ねずみなどを感染源とする「レプトスピラ感染症」。ねこや犬、さらには人にも感染する可能性がある病気です。いったい、どんな病気なのでしょうか? 『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』では、愛猫家の医学博士しんコロさんが、この病気について詳しく解説しています。
レプトスピラ感染症の予防法は?
Question
今日、NHKのドクターGで「レプトスピラ感染症」という症例を見ました。感染源はねずみで、糞尿が水道水などを経由して人にも感染するとのことでしたが、直接ねずみを食して生きている野良ねこさんたちには感染しないのでしょうか?
野良ねこに限らず、家ねこやねずみをオモチャにして遊んでしまう犬なども感染が心配です。ねこや犬が感染しても発症しなくても、保菌した状態のままでいる個体もいるのでしょうか?
また、感染を防ぐには「うがい、手洗い」で十分なのでしょうか。
しんコロさんの回答
レプトスピラ症は螺旋状のバクテリアの感染によって引き起こされます。レプトスピラの自然宿主はねずみなどのげっ歯類で、腎臓で増殖し、排泄された尿中にレプトスピラが多く含まれています。そして汚染された土壌や水を通し、さまざまな哺乳動物に経口感染または経皮感染します。
このようにレプトスピラは人畜共通感染症(ズーノーシス)という感染症なので、ペットを介して人間に感染することもあります。
さて、レプトスピラが見つかる環境は水辺などが多いので、水辺を比較的嫌うねこには比較的感染率は低めです。また、免疫の状態にもよりますが、健康なねこであれば感染から回復します。しかし、症状がなくなっても腎臓にレプトスピラが保菌されるということもあります。一方、犬は水辺で遊んだり水や土を舐めてしまうので、獣医でレプトスピラと診断されるペットは犬の方が多いという傾向があります。
レプトスピラはコークスクリューのような螺旋状をしていて、皮膚を貫通して感染するのがやっかいです。そのため、愛犬が感染していると診断された場合には、尿の扱いには十分注意し、掃除をする時なども手袋をすることが大切です。「うがい、手洗い」は効果ゼロではありませんが、タイミングが遅れたら効果があまり期待できないと思います。
人間に感染した時の症状は、2週間ほどの潜伏期間を経て風邪のような急性熱疾患が現れます。軽症型の場合はそのまま回復しますが、重症型では発症の1週間後くらいから黄疸、出血、肝臓や腎臓の機能障害が現れ、致死率は最大で50%にまで至ります。治療は主に抗生物質を使用します。
予防法としてワクチンも存在しますが、レプトスピラにもさまざまな型があり、現在ではワクチンもそのすべての型のレプトスピラに対応しているわけではありません。
我々ペットを飼っている人間としては、ねこは室内飼いにし、犬は怪しい症状が出たらすぐに獣医の診察を受けることが、飼い主や家族にも感染を広げないために重要なことといえます。
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『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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