使ったら損。能力の“チラ見せ”で生き抜く、日本伝統の価値観とは

2016.03.03
by まぐまぐ編集部
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「いかに能力を発揮するか」ということについて、誰もがいつも悩んでいると思いますが、無料メルマガ『サラリーマンで年収1000万円を目指せ。』の著者・佐藤しょ~おんさんによると、京都の”言わずに伝える”や、サムライの”抜かない刀”に見られる「使ったら損」という生き方が日本には昔からあるとか。企業で長く生き抜いていくヒントになりそうですね。

「使わにゃ損」と「使ったら損」の価値観

私の思考の嗜好として(音読したら分かりにくいな)、自分と異なる存在に対する興味、なかんずく、価値観や文化が異なる人に対する興味が消えないんです。興味が高じて、比較文化論とか、民俗学とかの本を読む事が多いのですが、その延長線でこのあいだふと気づいたのが、「使わにゃ損使ったら損の違いなんです。

使わにゃ損」というのは、アングロサクソンを中心とした価値観、「使ったら損」はズバリ、日本人の価値観ですよ。日本は気候的に豊かな国なのに、「勿体ない」という概念を発明するくらい、「使わずに済むのなら出来るだけ使わないようにしよう」という価値観を強く持っているんです。それが高じて、「使うヤツは下品」というレベルにまで昇華しちゃったのが、古(いにしえ)の都、京都人の表現方法なんです。

世界の言語で、京都の人ほど「婉曲話法」を深化させた民族はいないと思います。「もう1杯お茶入れましょか?」は、「はよ帰れ」って事ですから。言葉という伝えるためのツールでさえも、直接的に使わずに機能させようというのですから、日本の中の異文化ですよ。

今から150年ほど前、日本には「サムライ」という人種がいて、彼らは人殺しの道具としての刀を身に付けていたわけですが、実は幕末の一時期を除いたら、サムライのほとんどが、生涯一度も刀を抜くことが無かったんです。なぜかというと、ひとたび刀を抜いたら、相手を斬って殺すか、自分が斬られて死ぬかのどちらかになると分かっていたからです。相手を殺しても、場合によっては自分が切腹する事もあり得るわけで、だからいかにして刀を抜かずに勝負を決めるかを考えたわけですね。勝海舟なんて、刀の鯉口を紙縒りで綴じていたらしいですから。これもまさに「使ったら損」の価値観ですよね。

ところがアメリカ人は、「持っているなら、使わなきゃ損」だと考えるんです。使わなくて済むのなら、初めから持たなきゃいいじゃん、というある種の合理性があって、持ってしまったのなら、どうやって有効的にこれを駆使すればいいか、を考える民族なんです。彼らには、”武士の象徴としての刀”という価値観は通じません。

余談ですが、この違いがあるから、たとえ日本が核武装をしても、日本人がこの武器を使うことは無いと思いますよ。というか、たぶん日本人が一番、本来の狙い通りに核兵器を使いこなせると思うんですけれどね。

そして、この考え方の違いは、ビジネスの場でも現われます。例えばアメリカで資本は道具ですから、これを如何に有効的に使い倒すか、考え方が確立しています。これをROI(Return On Investment=投資対効果)と言うのですが、日本の経営者は積み上がった内部留保を使いもしないで貯めるのが好きなんですよね。「株の持ち合い」なんていうのも日本に独特の珍現象で、もっと直接的にリターンを求められるおカネの使い方があるはずなのに、わざと10年後、20年後にじんわりと効いてくる方を選んだりするんです。

人材に対する考え方も同じで、アメリカでは、入社してから如何に短期間で成果をあげ、会社に貢献してもらえるかを考えますが、日本では鷹揚に、「将来日本という国家に、なにがしかの貢献をしてもらえればそれで良し」くらいに考えている経営者が、かつてはたくさんいました。というか、今でも総合商社における人材教育って、20年、30年というスパンで考えていますから。

アメリカ流の経営手法が輸入され、MBAホルダーがもてはやされるようになってから、流れが急に変わりましたが、天の邪鬼の私は、みんなが右に行ったら左に行きたくなるところがあって、むしろこれからは、かつての日本人が持っていた「使ったら損」という価値観が重要になると思うんです。

使わずに、持っているだけで、チラリと見せるだけで威力を発揮させる生き方とは、どうやったら出来るのか。これが今年のテーマだったりします。

image by: Shutterstock

 

サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
著者/佐藤しょ~おん
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