極右政党台頭の原因はテロじゃない。フランスが抱える最も深刻な問題

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パリで起きた同時多発テロ事件がまだ生々しい記憶として残っている、フランス。この国で極右政党と呼ばれる「国民戦線」が、地域県議会選挙で首位を獲得しました。これにより、テロが「国民戦線」を押し上げたようなイメージを抱いてしまいますが、果たして実際はどうなのでしょうか。今日も世界中を飛び回っている事情通の高城剛さんが、メルマガ 『高城未来研究所「Future Report」』 で、今回のフランスの極右政党の台頭について詳しく分析しています。

世界の俯瞰図

フランスの極右政党の台頭につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

6日、フランスの広域自治体である地域圏議会選挙の第1回投票が行われ、移民排斥を掲げる極右政党「国民戦線(FN)」が、全国で約30%の得票率で首位を獲得しました。

昨年からこのメールマガジンで何度も取り上げたマリーヌ・ル・ベン率いる「国民戦線FN)」の勝利は、先月のパリ同時テロを受け、治安問題への有権者の関心が高まったことが追い風になったと報道されています。

次点は最大野党、サルコジ前大統領の共和党を含む右派連合が約27%で、オランド大統領率いる与党・社会党の左派連合は約23%の3位へと転落しました。

さて、フランスでは「極右」と言われる国民戦線は、移民排斥を掲げているためそのように呼ばれますが、日本での「極右」とは、かなりニュアンスが異なるように思います。

もともと左寄りな中道左派が強い欧州全般の政治において欧州でいう「極右」は、中道右派が強い日本のあり方とは大きくポジションが違うのです。

まず、欧州の極右」と呼ばれる政党のほとんどは、新自由主義と呼ばれる「米国化」に反対している立場で、このあたりは「米国になってしまった」日本のマスメディアでは、なかなか報道されないところだと思います。

実際、「極右」と言われるフランスの「国民戦線」は、「米国化に反対」するだけでなく、公務員の削減や減税を大きく打ち出している上に、フランスの文化を尊重する移民は歓迎しています。

すなわち、武器輸出解禁等進める日本の中道右派より、むしろ欧州の「極右」のほうが左に位置するように僕には見えると、以前にもこのメールマガジンでお話ししました。

そこで、日本のメディアから見れば先日パリで起きたテロが、極右と呼ばれる「国民戦線」を第1党に押し上げたようにみえますが、実は経済問題がもっとも大きな勝因なのです。

国際ニュース専門局France24によりますと、国民戦線に投票した理由の1位は失業(44%)、2位がテロリズム(32%)というIpsosの世論調査が掲載されていることからもわかるように、米国化することによってもたらされてしまった「貧困」こそが、現在のフランスの最大の問題であり、それゆえ「米国化に反対」するだけでなく、公務員の削減や減税を大きく打ち出し、財政政策を大きく変えようとしている「国民戦線」に人気が集まっていることが理解できます。

言い換えれば、現在の世界の先進国では、既存政党ではもう国家運営できないと多くの人々が考えはじめていることの証で、この点では米国で再び注目を集めトップに返り咲いた米国の共和党から次期大統領候補しているドナルド・トランプと似ているとも言えます。

どの国でも「異端のトップ」が求められているのです。

大事に見えるテロは世界的なトピックであるのは間違いありませんが、実はそれ以上に大きな社会問題となっているのは、経済問題からなる米国式貧困の拡大です。

日本では愛国や国粋主義が反米となりませんので、このあたりの感覚的理解は難しいかもしれませんが、「欧州の右」と「日本の右」が異なるように、「欧州の中道左派」や「日本の中道左派」も大きく違います。

そして、世界は「中道」ではなく「極」端でなければ、問題を解決できないステージになっているとフランスを見て感じます。

次のフランス大統領選は2017年で、「国民戦線FN)」の党首マリーヌ・ル・ベンは米国の押し付けに徹底的に対抗していることから、「フランスのプーチン」とまで呼ばれているのです。 

image by:Shutterstock

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 『高城未来研究所「Future Report」』
著者:高城 剛
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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