子どもの宿題を業者に頼む親は、何が大切なのかわかっていない

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夏休みの宿題代行業者への依頼が増えているという。たしかに楽になるけれど、本当にそれでいいのでしょうか? 現役教師で『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』の著者・松尾英明さんは、宿題には子どもの成長に大切な意味があると訴えています。

夏休みの宿題代行業隆盛に思う

夏休みの宿題代行業があるという。 

学校からすれば、恐るべきことである。もはや、なんのために夏休みの宿題が存在するかという存在意義自体が問われている事態である。

業者の側の視点からすれば、儲かるからやっているだけである。なんなら、苦しんでいる親子を救っている存在ともいえる。

利用する親の側からすれば、助かる存在である。どうにもこうにも手のつけようがない我が子の宿題を「処理」してくれる。

学校の側からすれば、まったくもって心外である。夏休みの宿題の大切なねらいのひとつである「望ましい生活習慣の形成」など、見る影もない。

まあ、どの立場の人がどう受け止めてもいいのだが、上記三者の例では、大切な人の視点が抜けている。

子どもである。
子どもが、夏休みの宿題によって、何を学ぶかである。

夏休みの宿題を、8月31日の夜に親に手伝ってもらいながら必死に終わらせた経験がある方もいると思う。まあ、宿題のねらいからするとかなり外れるが、この場合とていろいろなことを学ぶ。
計画的に物事を進めておくことの大切さ。
先延ばし癖の害悪。
親への申し訳なさと感謝。
自己批正。
夏休みの宿題への遺恨も残すかもしれないが、いろいろ学習する要素がある。

これを、代行業者に親が委託したとする。何を学ぶのか。
正直に話すより、ずるしてでもごまかすこと。
お金さえ払えば大丈夫。
いざとなったら親がすべて何とかしてくれる。
そんなことを学ばせて、子どもをいったいどうしたいのか。

もしかしたら、受験があるなどの理由から、どうしてもやりきれなかった面があるかもしれないとも思う。それは、学校の側も配慮が必要なのかもしれない。

ただ、学校としては「こういう事情で、情けないことですが、どうしてもやれませんでした」と説明してくれれば、それ以上追求はしない。事情をおもんぱかることができる。
そんなこともできないぐらい脆弱な関係性なら、そもそも担任と生徒という関係として成立していない。

また、そんなに親子を苦しめるような宿題の出しかた自体にも問題があるかもしれない。ここは、場合によっては学校側が大いに反省すべき点もある。

とにかく、それが本当に子どものための宿題になっているのかというのが大切な視点である。
学校は、子どもを成長させ、よくしていくための機関である。宿題は、その機能のひとつである。
そもそも論に立ち返り、宿題の意義について考える必要があるように思う。

image by: shutterstock

 

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著者/松尾英明
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