【マンションの深イイ話】とある理事長の心に染みる交渉テクニック

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マンション管理組合と管理会社といえば、なぜかいつも敵対しているイメージがありませんか? メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者、廣田信子さんは、とあるマンションの任期1年限りの理事長が見せた、誰もが幸せになるような驚きの交渉術を紹介しています。

管理会社もリスペクトする理事長

こんにちは! 廣田信子です。

30戸ちょっとのマンションのある理事長は、輪番制で理事になって改めて過去の管理組合運営や管理会社の仕事をチェックしてみたら、いろいろ気になることが出てきます。

それまで、総会にも出たことがなかったというぐらい任せっぱなしだったのですが…。

ちょうど、管理会社から修繕積立金改定の提案があり、これは本格的に資金計画を考えなくてはと、管理委託費や管理会社からの提案工事の金額の妥当性等を、徹底的に検証することにしました。

事業をやっていて人脈が広い理事長は、知り合いの専門家に妥当性のチェックをしてもらい、管理会社をリプレイスする気になればかなり管理委託費を下げることが可能だということはわかったのですが…。

この理事長のすごいところは、気になることをその都度フロントに言って責めたり、根拠なく高いんじゃないの…と言う、というようなことはせず、フレンドリーな話し方で、話を引き出しながら管理会社を観察して、その一方で、交渉材料になりそうなデータを短期間でしっかり集めたことです。

で、理事1人1人に根回しして了解をとった後、管理会社の責任者との直接交渉に臨みました。そんな素振りを感じていなかったフロントはさぞびっくりしたことでしょう。

で、細かい話は省きますが、紳士的な話し合いがもたれ、後日、理事長が思った通りの管理委託費まで減額が決まり、提案工事も大幅に減額、今後、提案工事の見積は利益を乗せ過ぎないということで、話がつきました。

理事長の申し入れ金額が、データに基づいて算出し、管理会社の立場も考慮した非常に妥当なものだったので、たぶん、管理会社は「おそれ入りました状態だったのだと思います。これは、すごい人だと。

過去に管理委託費を高く取り過ぎていたと責めたり、委託契約書の内容を重箱の隅をつつくように質問する、なんてことは一切せず、リプレイスすると脅したり、すべての工事は相見積をとって一番安いところに出す、なんていうこともなく、担当フロントを責めるようなこともなく、紳士的に対応し、望んだ通りの結果を手にしたのです。すごいですよね。

で、もっとすごいのは、自分がこんなに頑張って管理会社に減額させたなんて一言も言わないで、管理会社から管理委託費の減額提案と、それで浮いた分、管理費を修繕積立金に回す提案があったという形で総会に掛けたのです。

この理事長に対しては管理会社もリスペクトの念を持ったことでしょう。と同時に、この理事長は管理会社にとって一番怖いお客でもある訳です。

もし、何か信頼関係を裏切るようなことをしたら、何も言わずに、ある日突然契約解除の申し入れが…なんてことがあっても不思議はないのですから。

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