暗殺を恐れる習近平。腐敗一掃で中国共産党の不満分子が爆発寸前

 

無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、これまでもたびたび「米国は中国を国際社会から孤立させようとしている」としてきましたが、アメリカの歴史学者エドワード・ルトワック氏の著書によると、中国のトップである習近平氏も、共産党員たちに疎まれ誰からも重要なことを知らされず「孤立化」した状態に置かれているそうです。今、中国では何が起きているのでしょう。北野さんが解説してくださっています。

中国4.0 習近平は、中国のゴルバチョフ

今日は、全国民必読の書「世界3大戦略家」エドワード・ルトワックさんの『中国4.0~暴発する中華帝国』について。皆さん、世界3大戦略家のルトワックさんが、今の中国、中国の未来について、どう考えているのか知りたくないですか? 正直、「驚愕の中国認識」でした。「習近平は、ソ連を崩壊させた男ゴルバチョフと同じだ」と言うのです。なぜでしょうか?

習近平とゴルバチョフ

これは、ルトワックさんの本からではないですが。有名な話として、中国共産党は、「2つのこと」を熱心に研究していました。1つは、「なぜ日本のバブルは崩壊したか?」「崩壊を回避する方法はあったのか?」。もう1つ、「なぜソ連は崩壊したのか?」「崩壊を逃れる方法はあったのか?」

ソ連崩壊については、はっきりしています。要するに、ゴルバチョフは、「優しくなりすぎた」のです。彼は、「グラスノスチ」といって、「言論の自由」を許しました。すると、全国民がゴルバチョフの悪口ばかりいうようになった。政治活動、経済活動の自由も、ある程度許しました。すると、ソ連の一共和国に過ぎなかった「ロシア共和国」の大統領エリツィンがどんどん強くなり、結局クーデターを起こされてしまった(1991年12月、12共和国の首長が集まり、ソ連にかわる「独立国家共同体」の創設を決めてしまった)。誰がどう研究しても、「ゴルバチョフは優しすぎた」という結論になります。

ちなみにロシアではいまだに、「トウ小平のようにやっていれば、ソ連は存在していた。残念だ」という人がいます。

中国をソ連のように崩壊させたくない習近平は、ゴルバチョフと「正反対」のことをしている。それが大規模な「反腐敗運動」です。ゴルバチョフは「優しすぎた」ので、習近平は逆に「厳しく」しているのですね。

ところが、ルトワックさんに言わせると、「結果は同じ」なのだそうです。

そもそもミハイル・ゴルバチョフの狙いは、ソ連そのものを改革するところにあった。しかし結局、ソ連全体を崩壊させてしまった。

 

そして習近平も同じ道を歩んでいる。習近平は中国共産党を改革しようとしているのだが、その向かう先には、党の崩壊が待ち受けているからだ。
(118p)

かなりショッキングですね。どうしてそのような結論になるのでしょうか? ルトワックさんによると、「反腐敗運動」が党を動かす「エンジンを奪ってしまうからだそうです。なぜ?

毛沢東時代の「エンジン」は、イデオロギーであった。彼らは紅衛兵を動員して、共産主義のイデオロギーを共産党の「求心力」としたのである。

 

ところが次のトウ小平の時代には、そのイデオロギーが影を潜め、その代わりに共産党の「エンジン」となったのは、マネーであった。そして当然のごとく、党内に汚職と腐敗が蔓延することになる。
(118p)

汚職」のおかげで、党員たちはリッチになっていきました。そして彼らは、子供たちを海外に留学させ、妻にBMWを買ってやることもできるようになった。つまり、正規の給料以外に、賄賂などで「大儲け」できることが党員の「エネルギー」であると。これを奪ったら、「中国共産党」は「エネルギーを失って崩壊する」と。

汚職を無くすと組織のエネルギーが無くなって崩壊に向かう」というのは、面白い論理ですが、今の中国をみると納得ですね。

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け