聞いてない。明日から豚生レバー禁止らしいので、改正基準を検証した

2015.06.11
by まつさん。
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2015年6月2日、厚生労働省が豚レバーの生食での提供禁止を受け“豚レバ刺し駆け込み需要”が広がっています。6月12日より適用される豚レバーの生食禁止に対し、ネット上では規制に対する賛否両論の声とともに、規制の内容について様々な憶測が飛び交っています。今回は厚労省の提出した「食品、添加物等の規格基準」の内容を確認するとともに、もう豚肉が食べられないのではという嘆きにお答えします。

豚の食肉に関する提供条件

今回改正された内容を要約すると、この一言につきます。

販売者が一般消費者向けに豚の食肉を使用して食品を製造・加工・調理する場合は、豚の食肉の中心部まで十分に加熱しなければならない

引用:食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について

ここで言われる「十分な加熱」の例
⇒中心部の温度を63℃で30分間以上加熱する
⇒中心部の温度を63℃で30分間以上加熱すると同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌
(中心部の温度を75℃で1分間以上加熱殺菌すること等)

豚しゃぶしゃぶも食べられなくなる?

“63℃で30分以上”という表現をそのまま捉えてしまうと、鍋の中で軽く火を通していただくしゃぶしゃぶが食べられなくなるのではという懸念が出てくるかもしれません。しかし条件でもあげられている通り、63℃で30分以上の加熱殺菌と同等の殺菌効果のある加熱をすれば問題ないので、しゃぶしゃぶをする際のベストの鍋の温度と言われる80℃でしゃぶしゃぶをする場合は通常通り(安全のためには気持ち長めにしゃぶしゃぶした方がよいでしょう)の食べ方で問題ありません。注意しておきたいのは、鍋の中に冷たいお肉を入れるとお湯の温度が下がりますので、なるべく温度を下げないように火力の管理をしましょう。また、しゃぶしゃぶする際に使うお箸は生肉を触っているので、しゃぶしゃぶするお箸と、食べる際に使うお箸は別々にするなど生肉に触れないようにしましょう。

豚ホルモンの焼肉は食べられないの?

焼肉店で提供される豚ホルモンももちろん豚の内臓ということで、今後自分で焼くことはできないのでしょうか。この点についても運用上の注意にて「飲食店で一般消費者が自ら豚の生肉等を調理し、飲食する際には、一般消費者に対しコンロ等加熱設備を提供するよう事業者に指導すること」とあることから、必ず消費者が生の豚の内臓に火を通すことができる環境を提供することで問題ないとされます。消費者は、より豚の生食による危険性をしっかり認識した上で焼肉を楽しみましょう。

焼肉も30分以上火を通さないと危険なの?

焼肉で生の豚レバーを食べる際、どれだけ焼けば本規格に沿うのでしょうか。条件で提示されている「中心部の温度を63℃で30分間以上」は焼肉の概念を犯しかねないため、同等の加熱殺菌例「中心部の温度を75℃で1分間以上」から考察してみます。ある調査によると、備長炭で160gの肉を焼いた場合、表面温度が85℃の時の内部温度は55℃(マイナス20度)との結果がでており、また東京都健康安全研究センターの調査では、炭火で焼いた焼き鳥の中心温度が65℃になるまで、10分強の時間を要するとのデータも。肉のサイズや部位によって火の通りは異なりますが、10分強は火を通していた方が安全と言えるでしょう。

家庭の食卓にも影響するの?

今回の企画基準改正により考えられる一般消費者への影響として、以下の点があげられます。

・飲食店で豚の生レバー(レバ刺しなど)を食べることができなくなる
・豚肉をスーパー等で購入する際、要加熱等の注意喚起が目立つ(と思われる)
・豚肉の生食の危険、生焼けなどにより注意しなければならない

この騒動の以前より、「豚肉はしっかり火を通さなければならない」というのは常識と言っても良いほど認識されていたはず。にもかかわらず、牛レバーの生食禁止が波及して一般化してしまった豚レバーの生食は結果として、消費者のE型肝炎ウイルスや食中毒への感染リスクを高める結果となりました。提供側の意識を高めることも必要かもしれませんが、まずは消費者自身が自分の身体に入れるものの安全性を認識することが重要と言えます。

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