近年よく耳にするようになった人工知能 (AI : artificial intelligence) ですが、皆さんは人工知能についてどれくらいご存知ですか?最近では、グーグル社が開発したコンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」がプロ棋士と対戦し、4勝1敗で勝利したことが話題になりましたよね。そんな人工知能が、今度はなんと映画の脚本を書いたというので驚きです。人の心に訴えかける「アート」の分野において、果たして人工知能が能力を発揮できるのでしょうか。
人工知能が書いた脚本を映画化、「ヒット作」をめざす
これまでグーグル社は、人工知能による作曲や作詩など、「オリジナル作品」を創り出すことを目的としたプロジェクトに取り組んできました。
そのためには同社が開発した「機械学習エンジン」が使用されるとのことですが、例えば詩を作るために、3000冊近くのロマンス小説や1500冊のファンタジー小説など、総計1万1千冊以上の本を読みこませ、いわゆる「学習」をさせるそうです。
その「知識」を以て作業に応用していくのが人工知能の仕組みというわけです。
グーグル社のそういった「アート」の分野への試みがすでに始まっていますが、今回クラウドファンディングを行うアメリカのウェブサイトKickstarterに登場したのは、人工知能が脚本の一部を手がける長編映画の製作という企画。
image by: Kickstarter
人間との共作ということですが、そのプロットも人工知能が過去にヒットした映画についてのデータを解析し、ヒットするジャンルを決定したのだとか。
「今日作られている映画のうち、およそ85%が収益を生んでいない。それは映画とその映画を鑑賞した人の『テイスト』のズレが原因だ」と語るのは、カナダのデータ分析会社Greenlight Essentialsの設立者であり、今回の企画者であるJack Zhang氏。
「我々は今回人工知能を使って映画の構成を練り、あらすじを作った」と話し、ヒット作を生み出すためには、ゴーストと家族関係の両方を描いたホラー映画を作るべきだというのが人工知能による分析結果で、予告編にはピアノのシーンとバスタブのシーンを入れるというのも、人工知能の「提案」だそう。
ホラー映画のジャンルにおいてキーとなる客層は25歳以下の女性であると言われています。
本作は、子どもの死から立ち直るために郊外へ引っ越した家族が、すぐにその新しい家でお互いを陥れるような恐ろしい体験をし始める、というあらすじですが、実はこれも、その客層からの好反応を狙った人工知能の分析結果を受けたものだそうです。
人工知能を使った短編映画は過去にも制作されていますが、反応はイマイチだったようです。
CNetのAmanda Kooser氏は、「いずれはニューラル・ネットワークがアートの分野において活躍を見せるだろうが、今はまだまだ発展途上だ」と語ります。
「IMPOSSIBLE THINGS」の予告編
今回人工知能が脚本を書いた初の長編映画となる「Impossible Things」の予告編を見た人たちからは、「すごい!AIが脚本まで書けるようになるなんて!」という感激の声もありますが、「芸術は終わった」、「AIは芸術を侵している」、「お金の無駄だ」などという批判的なコメントも目立ちます。
なかには「素晴らしい芸術作品とは、あくまでも脳と『心』によって生まれるのだ」という意見もあり、確かに私たちの心に訴えかけるものは、『心』を帯びている必要があるのかもしれません。
今後人工知能がどこまで人間の『心』に近づけるか、見ものですね。
image by: Kickstarter/ Greenlight Essentials
Source by: The guardian, Kickstarter , Greenlight Essentials
文/貞賀 三奈美