誰もが知る名経営者である松下幸之助と本田宗一郎は、社員を「叱る」ことにおいても名人だった? 無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、両経営者の叱り方の違いを分析しつつ、真に効果的な社員の叱り方を探っています。
「叱ることの意味」
「叱る」と「怒る」は似ているようで違います。
企業でも家庭でも、してはいけないのは「怒る」ことです。「怒る」のは、自己中心のただ単なる感情の現れです。これに対して「叱る」ことは、自己中心でない目的があります。「叱る」と言いながら、そこに自己があるときは「怒り」でしかなく、相手に「恨み」や「憎しみ」を植え付けるだけです。
経営者で「叱る」名人の代表格は、松下幸之助さんと本田宗一郎さんです。この二人がもっとも結果的に見て効果的な「叱る」ことができた人です。
この二人の「叱り方」は性格を反映してか少し趣が違います。共通しているのは、「叱り」はじめたら烈火のごとく激しく迫力があったということと、「叱る」ということの根底に納得できる「価値観」があるということです。私心でない「価値観」がなければ「叱る」は「怒り」です。
松下幸之助さんの「叱る」
松下幸之助さんは、やはり理性の人です。
有名な話に、何かの公演の時に中小企業の経営者の「いくら頑張っても利益が上がらない」と問いかけに「あなたは血の小便を出るくらい努力しています」かという返事をしています。松下幸之助さんはとことん考える人です。
とは言いながら、叱る時の言葉遣いは結構きたなかったらしいのです。自転車のライトの改良がなされず、10年前と全く変わっていないことが分かり「それは私がつくったやつや、新しいのが出来てないとは何事や」「この給料泥棒」と激しい剣幕で怒ったそうです。
しかし、「叱る」効果を考えています。大きなチャンレンジを失敗して、大きな損失を出したとき、前向きで真剣に取り組んだ結果であれば、失敗した本人が一番その結果を深刻に受け止めているので、「本人がその結果をもっともよく知っているのだから、わたしはあえて強く追及しなかった」と言っています。褒めはしないが、労ったりもしたようです。
叱るのは人前で「叱る」場合と、席をかえて一対一で「叱る」使い分けもしているようです。