人間が「おいしい!」と感じる理由に、「五感の優先順位」が関係

武田邦彦 食卓
 

「これは健康に悪い、これも良くないと本に書いてあった」などと、食べることが「栄養をとるための行為」になってしまっていませんか? 今回のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』では、著者で中部大学教授の武田邦彦先生が「体に良いものは味覚が判断してくれる」との持論を展開。健康オタクだけでなく、一般の人にも当たり前となりつつある健康神話に疑問を呈しています。

料理屋の食事が美味しく感じる理由に「五感で感じる順序」が関係

美味しいものがなぜ健康に悪いのですか?」と25年ほど前から栄養の専門家にお聞きしているのですが、満足な回答を得られたことがありません。時には、「塩や砂糖は昔、手に入りにくかったので、食べられる時に食べなければならないので、美味しく感じる」という説明を受けることがありますが、それでも体内に塩、砂糖などの成分が蓄積してきて、もう食べる必要がないことを体が知っているはずなのに、美味しく感じる理由を説明してくれる方はおりません

私たちの体には「味覚」という機能があって、口に入るものが体に良いか、悪いか、危険か、などをとても細かく判断できるようになっています。

たとえば、採れたてのアスパラガスはとても甘くて美味しいのですが、2日目、3日目になるに従って、新鮮味がなくなり美味しくなくなります。でも、アスバラガスの成分が変化している訳ではありません。

おかしいですね?たとえば、黄緑色野菜が健康に良いといいますが、「なぜ、良いの?」と聞きますと、「βーカロテンが豊富だから」と答えてきます。でも、βカロテンが数日で分解されるものではありません。化学的には比較的、丈夫な構造で融点も180℃程度です。つまり、アスパラバス(黄緑色野菜の一種とされている)の栄養分は変わらないのに、味は落ちていくのです。

このことが何を示すかというと、味覚は栄養学より敏感だということです。だから、当然ですが自分の体に良いものは鋭く見分けることができます。さらに、台所のゴミの臭いはとてもイヤなものですが、それは「腐敗しているから危険だぞ」ということを味ばかりではなく、臭い(臭覚)でも感じることができるようになっているからです。

「美味しいものを食べることが体に良い」というのは当然で、それは長い人間の歴史の中で獲得してきたものです。だから、「心が素直で、頭が洗脳されていなければ」、自分の五感だけを信じれば栄養学はあまり参考にはなりません

「心が素直で、頭が洗脳されていなければ」というのは、味覚が余りにも敏感で、ちょっとしたものに影響されるからです。たとえば、カゼをひいて鼻が詰まっていると味が分からなくなりますが、これは五感の順序が「触覚─臭覚─視覚─聴覚─味覚」の順番になっていて、臭覚が閉じると味覚もダメになるからです。また飛行機のお弁当が不味いのも、ジェットの音が原因です。

つまり味覚は信用できるのですが、敏感なので注意が必要ということがわかります。料理屋に行って食べる時より家のお母さんの料理がそこまで美味しく感じない原因は、食材や料理の腕もありますが、多くは「家の食卓が雑然として、テレビがついているから」とも言われます。

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