内閣支持率が急落。新聞各紙は「安倍政権の危機」をどう報じたか

uttii20170619
 

各紙が一斉に報じた、安倍内閣支持率に関する調査結果。共謀罪の強行採決や「森友」「加計」両疑惑が響いたのでしょうか、どの調査も軒並み「急落」を記録しました。安倍首相は19日、通常国会の閉会を受けて行われた記者会見において、加計学園問題は「一点の曇りもない」と断言しましたが、有権者はどう判断するのでしょうか。ジャーナリストの内田誠さんは自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で、今回の支持率急落と今後の安倍政権の行く末について詳細に分析・解説しています。

内閣支持率急落!「安倍政権の危機」を各紙はどう報じたか

はじめに~危機の端緒

こんにちは。

内閣支持率が大きく動いているようですね。

《毎日》の調査では支持率36%で10ポイント減不支持率44%は9ポイントの増加で、支持率を上回ったのは2015年10月以来とか。《読売》はさすがに支持率もまだ高めで、49%もありますが、それでも前回比12ポイントの下落。不支持率41%は、《毎日》の調査結果とも近い、大きい数字になっています。

要因はもちろん、「共謀罪」法案のゴリ押しや「森友」「加計」の2つの“学園もの”と見られますが、圧倒的に影響が大きかったのは、「加計学園問題でしょう。理由は、その構図の分かりやすさ、「総理のご意向」という浸透力のあるフレーズ、それに、決定的だったのは頑なで露骨な隠蔽の姿勢です。ほとんどの人が「存在する」と信じた文書について、政府だけが「ない」と言い張り、文科省による最初の調査でも「見つからない」と発表してさらに批判を浴び、ようやく「範囲を広げた」調査で「発見した」と公表せざるを得なくなった。当初、文書を「怪文書」扱いしていた菅官房長官などは、「言葉が一人歩きして…と意味不明の言い訳で失笑を招き、しかも、誤りについて訂正さえしない傲慢さで顰蹙を買う始末。低レベルの“隠蔽”工作を、有権者に容易く見破られてしまったということでしょう。

「安倍政権はウソつきだ」

こういう感覚の広がりは、おそらくはこの先も急速に政権を蝕んでいくことになるでしょう。当然、政権も黙ってはいないでしょうし、様々な計略謀略策略を駆使してなんとか支持率を回復しようとするでしょう。市民は、そうした攪乱を狙った情報の洪水に対して正気を保っていられるかどうか、そのリテラシーを試されることになりそうですね。

ということで6月19日の『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』、ご覧下さい。

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「『心は女性』女子大も門戸?」
《読売》…「創薬専用のAI開発」
《毎日》…「民間検定・マーク式併存」
《東京》…「加計説明『納得せず』73%」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「『お客第一』サービス 転換点」
《読売》…「与党危機感『謙虚に』」
《毎日》…「支持急落 政権に逆風」
《東京》…「政府4条件 揺らぐ根拠」

ハドル

冒頭から「内閣支持率急落」について書いてしまいましたが、案の定、記事の方もこれが最大のテーマになっています。今日のテーマは…内閣支持率急落!「安倍政権の危機」を各紙はどう報じたか、です。

マフィア化する政治の中で

【朝日】は1面中央に「本社世論調査」についての記事。詳報は20日付け、つまり明日の朝刊ということに。他に、2面には長谷部恭男氏と杉田敦氏の対談で「マフィア化する政治」について。4面には、前田直人世論調査部長による「政治断簡」。まずは見出しから。

1面

  • 内閣支持率下落41%
  • 加計問題の説明「納得できない 66%」

2面

  • マフィア化する政治
  • 「共謀罪」法 議会の関係壊し危険 杉田
  • 説明責任果たさず権力を私物化 長谷部
  • 特区 恣意的行政になる恐れ 長谷部
  • 規制 不要ならすべて撤廃を 杉田
  • 改憲の道具として自衛隊利用 長谷部
  • 首相の加憲論こそ「印象操作」 杉田

4面

  • 世論に浮かぶ「面従腹背」(世論調査部長)

uttiiの眼

《朝日》のデータは「中位に収まっているようだ。支持率41%は《毎日》より高く、《読売》より少ない。支持率と不支持率の逆転を記録しているのは毎日だけで、《朝日》の不支持率も、支持率よりまだ5ポイント低い。

ただ、記事は支持率のトレンドについて「今年に入って下降傾向にあり、1月調査の54%と比べると、大きく下がっている。」また、全体のほぼ半数を占める無党派層だけで見ると支持は19%不支持49%と激しい結果となっていて、また女性の支持率も36%と低い。無党派層と女性の中で、安倍政権を支持しなくなった人がかなりの量出ているということだろう。その意味では、前川前文科事務次官に対する人格攻撃は功を奏さなかったと言えるかもしれない(あの攻撃がなければもっと大きな影響が出ていたかも知れないとも言えるが…)。

2面の対談は、通常、2人に別々にインタビューしたものを掲載する「考論」をクロスさせたというような趣向。それぞれ「論」を持った人同士の対談。かつて、自民党推薦の参考人として国会に呼ばれ、安保法制を憲法違反と断じた長谷部恭男早大教授と、法政大の政治理論の専門家、杉田敦教授の議論。「議会でまじめな審議をすること」の意味など、大切な議論があちこちで展開されているが、標題の「マフィア化する政治」に関わって何が言われているか、紹介しよう。

杉田氏は、「『1強』なのに余裕がない」ことが現政権の特徴だとして、したがって、「軽々に強硬手段に訴え」、都合の悪い文書は「怪文書」と決め付け、「恫喝的な態度を取る」。マフィア化とは、身内や仲間うちでかばい合い外部には恫喝的に対応するもの。米国やロシアも同様だという。

長谷部氏はその話に続けて、マフィア化の本質を「公が私によって占拠されている」状態とする。「公権力は私物化され、個人間の私的な絆をテコに政治が行われ」、反対する奴は切り捨てればいい…これがむき出しのマフィア政治だと。

以下、マフィア化を可能にしたのは90年代の政治改革で首相官邸に権力を一元化し、内閣人事局を作って高級官僚を政治任用にしたことであり、ところが、前提とされていた政権交代が実際には頻繁に起こらないので、各省庁の意見を無視して政権が何でもできることになってしまっていると。特区制度はマフィア化した政治に好都合で、本来なら一般的な政策課題とすべきことであること、など。最後に、憲法改正について。長谷部氏は、「どう生きるかは自分で判断する」というのが日本国憲法の理念であり、安倍政権はその理念を壊したいと思っていると。安倍氏の加憲論は現状維持なので「ただの無駄」。拠り所は「自衛官の自信と誇り」という情緒論だけ。実際には、憲法改正という個人的な野望のために自衛官の尊厳をコケにしていると杉田氏。

今回の内閣支持率下落が、有権者が政治の「マフィア化」を感じ取った末の変化なのかどうか。「身内でよろしくやっているは多くの有権者が共有したと思うのだが。

4面記事は、都議選に関する世論調査の結果。実は、自民党の支持構造は脆く、「自民に投票したい」と答えた人は選挙への関心が薄いので投票しない可能性が高い。逆に、投票する可能性が高い「大いに関心」層では自民党が嫌われているのだという。

この記事を読んで感じたのは、以前にも触れたように、国会最終盤の超強行策などは、都議選に関する調査の危機的な結果を受け自民党執行部が判断した可能性が高いと思われる。

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