科学者が断言。シャンプーに「経皮毒」なんて存在しない理由

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市販のシャンプーに含まれているとされる「経皮毒」なる毒性の成分を表す言葉。しかし、今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では、著者で科学者のくられさんが、「経皮毒」という存在自体がオカルトの類であり、現在は「悪の成分」とされていた物質を使用している製品がほぼ存在していないと断言。一部の人たちに信じられてきたシャンプーの「毒性」について、科学的に立証しています。

「経皮毒」という言葉

シャンプー。頭皮を洗う界面活性剤だが、その種類は様々、そして、纏わる都市伝説も様々です。薬局で迷っても、医薬品に関してはエキスパートの薬剤師もシャンプーの成分まで造指の深い人はさすがにおらず「肌に合った物を選んでください」的な回答しか得られず、どのように選べば良いのかはサッパリ…という経験がある人も多いことでしょう。故に、拙著の『薬局で買うべき薬 買ってはいけない薬』(ディスカバー21)でも、詳しく取り上げ、その成分の選び方などを乗せたところ非常に大きな反響がありました。

まともに語る人が少ない世界だからこそのオカルトがまかり通りやすいようで、経皮毒などといって、シャンプーの成分が内臓に蓄積するだの、免疫疾患を起こすだの…という話までまかり通っており、医者や薬剤師の中にもウッカリ信じてしまっている人までいる次第。

今回は、そうしたシャンプーにまつわる都市伝説、特に「経皮毒」に関して、科学の目、つまり配合成分から冷静に判断していきたいと思います。成分表示を見て、その商品が何かがわかれば、ニセ科学やオカルトも正体見えたり…というわけなのです。シャンプーオカルト一刀両断、しばしお付き合いください。

シャンプーが内臓に溜まるという説は本当なのか?

まずは、シャンプーの話題になると必ず出てくる「経皮毒」という言葉。この言葉は、東京薬科大博士課程を終了した竹内久米司という薬学博士が作った言葉であり、氏の書籍で提示された、界面活性剤の「毒性」を説明したときに使われています

氏の説は「シャンプーの中に含まれるプロピレングリコールやラウリル硫酸ナトリウムなどが、皮膚組織を容易に突破し、体内に侵入。それらが肝臓や子宮に蓄積し、アトピーなどのアレルギー病や不妊症、癌などの原因に…」という理論です。

多くの人はシャンプーごときで体が癌になる…とまでは信じなくても、実際に合成洗剤を使って食器を洗っていると、酷い手荒れになったり、シャンプーが合わなくて痒みやかぶれを起こしたりした経験を持っているので、そういう経験の上に、薬学博士という肩書きが後押しし信じてしまいそうです。一旦信じると、もうあとは「経皮毒フリー」の商品を探し求めてしまうことでしょう。

実際に、ネットで「経皮毒」について検索すると、多くの本の他、経皮毒の有害性を説くサイトを多く見つけることができます。そしてそれらの大半は、「経皮毒フリー」を唄う、高額なシャンプーの販売サイトです。

本当に「経皮毒」なる毒物がシャンプーには含まれていて、そうしたショップは経皮毒に侵されない、自然派のとても良い商品を売っている善意の業者なのでしょうか? 市販のシャンプーの肩を持つ者は御用学者なのでしょうか(笑)。しかも博士号まで持つ人が言うくらいだし、信じてしまいそうです…本当に正しいのでしょうか?

さて、この理論のおかしい点を見つけていくには、「ウソだ」「根拠がない」などと頭から否定せず、シャンプーの成分から考えていけば見えてくるのです。シャンプーの成分は商品の裏を見れば乗っています。現在は平成18年の薬事法改正以降、医薬部外品も、全成分を商品ラベルに記載しなくてはならなくなっており、全成分が配合量の多い順番で載っています。

見ると、ラウレス硫酸Naや、スルホン酸なんとか、ココイルメチルタウリン、コカミドプロピルベダイン、なんたらTEA等々…聞いたことも見たことも無い薬品の名前がズラリと並んで、流石にこんなたくさんの化学物質を頭皮につけても大丈夫なのか…と、思う人もいるかもしれません。

しかし、これらは、シャンプーという商品を根本的に見ていくとどれも商品の安定性や機能性のために配合されているもので、それらの成分名から働きを考えれば肌荒れやカブレもちゃんと理由が見えてくるわけです。

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