交渉のプロが懸念。「四面楚歌」の韓国が、北朝鮮を追い詰める

 

2月末にベトナムのハノイで開催された第2回米朝首脳会談は物別れに終わったものの、3回目の会談の可能性がなくなったわけではないようです。それでも「先行きは明るくない」と分析するのは、数々の国際舞台で交渉人を務めた島田久仁彦さん。島田さんは自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で、米朝関係を複雑にする米中、米韓の関係について持論を展開しています。

北朝鮮はまた逃げ切ることができるのか?

2月末に開催された第2回米朝首脳会談の決裂の後、各国のメディアは様々な角度から「なぜ会談は決裂したのか」解説を試みています。実際の理由については、それぞれのリーダーの頭と心の中を覗いてみないと分からないでしょうが、会談は決裂し、合意は何も得られなかったことは事実です。

あえて理由を探すのだとしたら、やはり、金正恩氏と北朝鮮が、トランプ大統領の合意への傾倒度を見誤り、非核化についての答えを用意していなかったことだと考えます。

3月に入ってトランプ大統領は、従来のポジションである「不可逆的で完全な非核化の実施が確認できるまでは、いかなる制裁も緩和しない」との立場に立ち返り、緊張が高まっています。

それに正面から受けて立つつもりなのか、北朝鮮も外務次官を通じて、対米交渉の打ち切りの可能性を匂わせる発言をしてみたり、ミサイル・ロケット発射場を再興し発射準備を進める動きを見せてみたり、対抗姿勢を明確にし、一歩も退く気がない素振りをアピールしています。

表面的には、また従来のポジションに戻ってしまったように見えますが、大事なことは、アメリカ側はまだ対話のドアを閉じておらず、北朝鮮側もトランプ大統領への批判は避けていることから、第3回首脳会談の日程は決まっていませんが、まだ協議による解決を可能性として残しています。しかし、諸々の情報に照らし合わせると、先行き・見通しはそう明るくありません。

1つ目は、「話し合いのドアは閉じていない」姿勢を北朝鮮側が示すことで、アメリカは「またこれまでのように、時間切れを狙って逃げ切るつもりではないか」と勘繰り始めています。

ご存知の通り、トランプ大統領の現在の任期は2021年1月19日までとなり、すでに残り2年を切っています。仮に再選されなかった場合、トランプ大統領の現在の任期の間、のらりくらりと耐えていれば、また2021年以降、新たに対米交渉を始めればいいと考えている様子が見えます。

しかし、仮にトランプ大統領の再選がないのだとしたら、北朝鮮は本当に逃げ切れるでしょうか。残念ながら、2020年秋の大統領選挙に敗れるか、もしくはそれまでにロシア疑惑などが爆発して弾劾されるような可能性が高くなった場合、自らの任期中に北朝鮮を攻撃する可能性がかなり高まることになります。

仮に再選された場合、あと4年時間を稼ぐことができることになりますが、対北朝鮮のdeal makingに関心が残っていれば、トランプ大統領は恐らくのらりくらりはもう許さず、2021年以降の第2期目は、再選を要しないが故の強みを活かして、一気に攻勢を仕掛けてくることになるでしょう。どちらにせよ、北朝鮮は、今までの様に逃げ切ることはできないと思われます。

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