なぜ世界の自殺者数減少に比べて日本の減少率は緩やかなのか?

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厚生労働省の統計によれば、平成29年の日本の自殺者数は2万1321人で対前年比576人減の約2.6%減です。減ってはいるものの人口10万人あたりの自殺者数16.8は先進7ヵ国でダントツで、銃規制が進まないアメリカを除くと減少率も低い状況にあります。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で医師の徳田先生は、他国の自殺防止対策を紹介し、さらにうつ病の診断と治療に改善の余地があると提言しています。

世界的にみて自殺はどうなっているのか?

数年前にアメリカの俳優ロビン・ウィリアムスが自殺した後、それと同じような手段でアメリカで自殺した人が約1800人もいたと試算されています。これはウェルテル効果です。ゲーテの著書「ウェルテルの悩み」では、その物語に登場するウェルテルが自殺する展開でした。しかし、その本が出た直後に多くの若者が自殺を図ったとされています。そのため、有名人の自殺報道後に自殺者が増えることをウェルテル効果と呼ぶようになりました。

日本でも、ある若い女性タレントの自殺が報道された後の1週間に、その当時の自死者数が1日平均82人だったのが、そのタレントの死後1週間は平均124人となったことがありました。若い女性の自殺数が増えており、ウェルテル効果だったと考えられています。これは報道機関の学習が必須です。

世界保健機関は「自殺を予防する自殺事例報道のあり方」を勧告しています。これは、オーストリアでの自殺報道のあり方を変えたことで、大幅に自殺数が減ったことを参考にして作成されています。勧告には、自殺手段の詳細を報道しないようにすること、などがあります。それ以降、自殺報道はかなり変化してきており、報道側に学習効果を認めています。

自殺が世界的に減っている理由とは?

銃と薬物の規制の緩いアメリカを除いて、世界的には自殺は減ってきています。この傾向は世界のさまざまな地域で、異なった種類の人々で見られる傾向です。その背景要因もさまざまですが、国際的にも人口当たりの自殺数の多い日本は世界各国から学ぶことは多いと思います。

自殺数減少が目立つのはまず中国とインドです。そこでは従来、若い女性で自殺することが多かったのです。その理由は半強制的な結婚と家庭内暴力、地域での閉鎖的生活といわれています。近年、女性の自由と都市部への移動などにより、両国での若い女性の自殺が減っています

次に、ロシアです。そこでは中年男性のアルコール依存症に関連した自殺が多かったのです。ソ連時代はゴルバチョフの節酒政策によりアルコール依存症は少なかったのですが、ソ連崩壊後のアルコール購入の自由化政策が原因でした。そこで、プーチン大統領による節酒政策の再導入が行われたことにより、中年男性の自殺数が減りました。

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