もしも阿蘇山が大噴火したら?池田清彦先生による「ホンマでっか!?」な衝撃回答

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「ホンマでっか!?TV」でお馴染みの池田清彦先生が満を持してメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』を創刊! さっそくインタビューを申し込んだのですが、冒頭からいきなりものすごい話題に。先生曰く、人類は絶滅寸前とのことなんですが、一体どうして!?

くじけず、あきらめず、ぐだぐだ楽しんでがんばろう

生物学的観点から見て、いま一番気になる社会問題や環境問題はありますか?

う~ん、人類がちょっと増えすぎて絶滅寸前なんじゃないかと(笑)。

いきなり、すごい話ですね。

絶滅する前の種ってみんな、すごく繁栄して爆発的に増えてその後でクラッシュ起こすんだよね。たとえばティラノザウルスやトリケラトプスなんかが一番栄えてたのは絶滅する直前だからね。その時の環境に極度に適応していたから、環境が激変すると絶滅してしまうわけだ。現代人は現在の人工環境に極度に適応しているので、未開人に比べて絶滅しやすいと思う。たとえば昔、恐竜が絶滅したのは隕石が落ちたからなんだけれども、恐竜はでっかいからエサをすごい食わなきゃなんない。隕石が落ちて空が暗くなって光合成ができなくなっちゃうと、ほんのちょっとの食い物で生きてて、あとはぐーたらしてるようなやつは生き延びた。そうじゃないものはだめだった。

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恐竜は恒温動物だったと言われてるんで、結構エネルギーをとらないと生き残れなかったんだよね。だから生き延びたのはカメとかね。カメなんて例えば2ヶ月くらい食わなくたって休眠しちゃえばいいわけだけど、人間も恐竜も2ヶ月食わなかったら死んじゃうからな。

今は人工的にエネルギーを使って食物をたくさん作ってるから、食物はいくらでもあるんだけど、天変地異が起きると、ほとんどの人は生き残れない。たとえ生き延びたとしても、文明が作ったインフラは全部消滅してる。自分で食物をみつけて生き延びる方法をもってない人はアウトだよね。野生動物は住んでいる土地にあるものを勝手に食って勝手に繁殖してるわけだから、完全に自給自足

恐竜が滅びた原因は6,500万年前に地球に落ちた大隕石で、180キロくらいの直径のクレーターがいまユカタン半島に残ってるんだけど、そのときのマグニチュードは最低でもM11って言われてる。M11の地震によって発生したエネルギーは、あの東日本大震災の1,000倍だからな。人によってはM14ともいう人もいるけど、M14なんていったらもう、津波の高さが1千何百メートルになるでしょ。世界の大都市はだいたい海辺にあるから、日本だったら軽井沢とかにいる人しか生き残れないわけだよ。生き残っても、食い物は作れない、電気もエネルギーもなんにもない。コンビニの食品もすぐなくなっちゃうからね。そうなると生き延びることができるのは、たとえばニューギニアの高地人のように自給自足してる人くらいなもんだよ。

すると人類はそこからまたやり直しってことになるのかな。でもやり直せないで絶滅しちゃうかもね。だから、文明が進歩して非常に便利になって分業化が進み、こんなに人口が増えたっていうのは、ちょっと大きな天変地異があったら絶滅するってことだよ。地球温暖化だとか、海面が上昇するとか、紛争とか心配してるけれども、ほんとはそんなことよりも天変地異が起きたときにどうやって生き延びるかっていうことのほうがよほど大事だと思うよ。

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僕らが思っている天変地異は地球規模からみるとたかが知れたマイナーなものばかりだから。中世代の終わりに隕石がぶつかったカタストロフィだって、世界的な規模でいえば中程度かあるいはもうちょっと低いぐらいなんだよね。

カンブリア紀以降最大の大絶滅は今から2億5,000万年前の古生代の終わりに起きた。ものすごい天変地異で、火山の爆発をはじめとする大規模な地殻変動が起きた。西シベリアにシベリアントラップと呼ばれる、火山が噴火して溶岩流の流れた跡があるんだけど、その面積が日本の5.3倍だよ。だから、日本でたとえばその規模の噴火が起きるともうダメでしょ。

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日本でも最近、火山の活動が活発になってきています。大昔は日本でも大規模な噴火がたくさんあったんですよね。

日本だっていまから9万年前の阿蘇の噴火は大きかったんだよ。九州の北3分の2と山口県と愛媛県は溶岩流の下になってるんで、いま同規模の噴火が起こると1,100万人ぐらいが瞬時に死んでしまう。そういう噴火がたかだか9万年前に起きてるんだよ。日本に人間が渡ってきたのが2万年前くらいだから、人的被害はなかったんだけれども、この規模の噴火がもうすぐ起きても不思議ではない。

で、いま活発になってる阿蘇や桜島の噴火をみて、みんな噴火ってあの程度のもんかと思ってるかもしれないけど、そうじゃないんだよね。ちょっと大きな噴火っていうのはカルデラ噴火だから、それが起きた時はもうみんな大変な目に会うよね。十和田湖だってカルデラの跡だから、あそこ全部ぶっ飛んだわけでしょ。

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それから屋久島の隣の口永良部島が噴火してたけど、ちょっと北のところに鬼界カルデラってのがあるんだよ。それが爆発したのが7,300年前で、そのとき幸屋火砕流というのが発生して屋久島、種子島、大隅、薩摩の両半島の南半分はその火砕流でほとんど全滅してる。火砕流って海わたってくるんだよ。海わたってきて、山も登る。屋久島の永田岳の頂上直下にも火砕流の跡があるから、そこまで登ったってことでしょ。だから縄文杉の年齢が昔8,500年とか言ってたけど、うそだよね。せいぜい3,000年位じゃないかって最近言われてて。それでもまあ、すごいことはすごいけれども。

地震より、やっぱり一番怖いのは噴火だよね。それに備えることができるかっていったらできない。逃げるくらいしかないわけで。火砕流って時速120kmくらいで来るから逃げようがない。政府の要人なんかヘリコプターでどっか行くかもしれないけど、普通の人は逃げようがない

それに比べれば原発事故なんて大したことないっていえば大したことない。それでも原発をやめればいいわけだから解決は簡単だ。しかし、天変地異はどうにもならないもんねぇ。普通の人は自分が生きている間は大丈夫だろうと思って生きているんだろうけれど、100年先のことは分からない。

天変地異が起きて人類は絶滅という話ですが、そもそも生き残る可能性のある生物はいるのでしょうか?

絶対絶滅しないのは、バクテリアだよ。バクテリアはもうなにが起ころうと大丈夫だよ。放射能をまきちらされたって、そのくらいじゃ死なないしね。130度以上の温度で死なないバクテリアなんていくらでもいるし。バクテリアはこの世界で一番最初に生まれた生物だけど、たぶん一番最後まで残る生物だよね。

多細胞生物は環境変動に弱いよね。個体の寿命は長いけれども、システムが複雑すぎてちょっとしたことですぐダメになるでしょ。バクテリアは増殖率も突然変異率も高く、環境に適応する能力も高いけれど、僕らは簡単に環境に適応するってわけにはいかないんだよね。体のシステムが複雑すぎて遺伝子が突然変異を起こすと、多くは他の遺伝子たちの働きと整合的にならずに死んじゃうんだよね。そういう意味じゃ、もろい。複雑なシステムは総じてもろい。国家体制でもなんでもそうだけど、システムが複雑になっちゃうと、どこかひとつ穴があくとガラガラと崩れていってしまうわけだからね。

単純で簡単なシステムは簡単には崩壊しない。車だって昔の車はメカニズムが簡単で壊れても簡単に直せたけど、いまの車は壊れたらもうアウト。たとえば、エンジンが壊れたら、エンジンごと交換するしかない(笑)。

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現在のほとんどの人間は、極めて複雑になった社会システムに依存して生きざるを得なくなっているので、種の絶滅確率は普通の人が考えているより、はるかに高いと思う。

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