「男女間の性別役割をなくす」。そんな大きなテーマも、まずは小さな問題を解決することが大切なのかもしれません。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者での廣田信子さんが、20代の江東区議会時代に「女子社員のお茶くみ問題」を取り上げた活動を振り返り、「世の中を良い方向に変えていくために、今自分ができることに取り組もう」と記しています。
「お茶くみの政治学」小さなことから社会は変えられる
こんにちは!廣田信子です。
新聞記者の方が、懐かしい記事を送ってくれました。1991年9月、今から28年前の記事です。当時の地方議会の女性議員たちが、それぞれの議会で、お茶くみ問題を一斉に取り上げたときの記事です。その中に、私も含まれています。
大体「お茶くみ」といっても、今の方は、何のことだかわからないですよね。この当時は、ペットボトルのお茶が一般的ではなく、職場でも、お湯を沸かして、それぞれの湯のみ茶碗に急須でお茶を入れて飲んでいたのです。朝、10時、3時に全員にお茶を入れるのが、女子職員の仕事だったのです。
男女雇用機会均等法後、まったく同じ条件で採用されたはずの男女職員にも、こんな性別役割分担が残っているのが実態だったのです。そもそも、自分たちの飲むお茶を入れるのが、仕事?ですよね。
で、新人の女子職員は、どの湯飲み茶わんが誰のものかを覚えるのが最初の仕事なんていわれていたのです。調査によると、お茶入れとお茶碗を洗うのに要する時間は1日、45分から1時間。これが、女子職員だけに課せられていたら、仕事のパフォーマンスが下がって当たり前ですよね。
この当時、女性が、当たり前に働けて、ちゃんと仕事の内容で評価され、子供を持っても仕事が続けられる社会にしなければ…と全国で、女性議員たちががんばっていたのです。そのために、議会で具体的な問題をとり上げて、答弁を引き出し、役所内や役所の事業から変えていく…ということをやっていました。
職場におけるお茶くみ問題は、どこにでもある、分かりやすい性別役割分担意識の象徴だったのです。私も含め、女性議員たちは、議会義務局や議員仲間から、こんな些末なことを質問したら、あなたの評価が下がるよ…と諭されたり、そんなくだらない質問するのは許さない…とつるし上げられたり(笑)。それを押し切って、議会で質問をすると、どの議場でも、品のない、パワハラ、セクハラヤジが飛びます(笑)。
そのときのことが記事になっています。あまりの、陳ヤジ、陳答弁、不思議な反応に、改めて読んで苦笑です。
「採用試験で女性にお茶くみをどう思うか尋ねるのは、どんな感覚の持ち主か参考にするためです」
「女性がお茶くみをしているのは、優しい気持ちの発露によるものと考えます」
お茶入くみに命を懸けている人だっているのに、雑用みたいに言うのは失礼だろう!女性の仕事を奪う気か!女性にお茶を入れる男性なんているか!今では考えられない答弁、ヤジが議会で飛び交っていたのです。どれも、これも、今の人が読んだら???ですよね。
こういった質問をすることで、私たちは、いろいろな目に遭いますが、それでも、こういった実態を公の場で明らかにすることで、役所から「女性のお茶くみ」が消えていきました。それは民間企業や、地域や家庭にも広がって、今があります。
今の、国会や都議会のヤジを聞いていると、あのころと変わらないな…と思いますが、おかしな発言が許され、放置されることがなくなったのは、少しは進化しているのかも…。