誰もが知る『マッチ売りの少女』。主人公の少女が迎える哀しい結末が印象に残る童話ですが、今回の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』の著者で接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんは、少女の「お願いだから買ってください」などと自己都合を訴える販売トークに着眼した上で、「お客様都合で、買いたいと思って貰える」販売トークや態度について記しています。
マッチの売り方
『マッチ売りの少女』という童話がありますよね。ざっとあらすじをおさらいすると、真冬の雪の中、少女が父親からマッチを売りに行かされるも、まったくマッチは売れず。そのまま帰っても父親にぶたれるだけだからと、少女は頑張るのですが、誰も買ってくれず、家にも帰れず、少女は外で震えています。
そこで、少女はマッチを使って暖をとることを思いつくのですが、マッチに火をつけるごとに、少女の求めるものが目の前に現れては消えていき…最後には、亡くなったおばあちゃんが現れて、少女も一緒に…という、結構悲しい物語です。
この童話自体がどうこういう話ではないですし、得られるもの、感じるものは人それぞれでしょうが、個人的に、この『マッチ売りの少女』の中で、めちゃくちゃ気になってしまう部分があります。
少女のマッチの売り方です。
もちろん、この童話の少女はまだ幼いという設定で、売り方のことなど知る由も無いですし、そもそも、話の目的がそこじゃないので良いのですが、売り方が違っていたら、結末も全然違っていたんじゃないかと思ってしまって気になるのです。
よく、この童話が再現されると、マッチを売るシーンでは、少女が道ゆく人たちに、「マッチはいかがですか?マッチを買ってください」「お願いです。一本でもいいから誰か買ってください」みたいな表現がされます。この売り方って、物の売り方としては、最も避けなければいけない売り方だと思います。なぜなら、客側からすると、買う理由がないからです。
少女を店の販売員、道ゆく人たちをお客様とすると、販売員が「いかがですか?誰か買ってください」とお客様に言っているということになります。お客様的には、そもそも必要性を感じていないし、販売員から「買ってください」とお願いされたからと言って、お金を出す義理などありません。そりゃ売れるわけがないのです。
でも、これってありえないように見えて、実は、現実でもよく起こっています。お店へ入ってみると、待ち構えていたかのように、販売員が早々に接客に来て、「この商品はこういう商品なんですよ!」と、売りたいがための情報ばかりを伝えてきて、買ってくださいオーラをバンバンに出してくることがあります。
おそらくみなさんも、一度や二度ではないくらい経験されているのではないかと思いますが、それでは、マッチ売りの少女よろしく、売れるものも売れなくなります。自分たちの都合だけで物を売ろうとするのは、お客様にとって何のメリットもないので、買ってもらえることもないんですね。
でも、マッチ売りの少女にだって、売れる方法はきっとあったはずなんです。真冬の道すがら、道ゆく人たちに、「ご自宅のマッチは足りていますか?」と声をかけていれば、もしかしたら、「あれ?もうすぐ無くなるかも?」と思って買ってくれる人もいたかもしれません。
話上は大晦日という設定でしたから、「年明けはお店がやっていないから、今のうちに買い貯めておきませんか?」と言っていれば、「確かに無くなったら困るな」と考える人が買ってくれていたかもしれません。