通信網の発達により、世界各地のトピックはほぼリアルタイムで知ることができる現代社会ですが、その土地土地の「生の空気」を感じるのはまだまだ困難と言えるでしょう。そんな中、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんの元に、中国在住10年という読者から貴重なメッセージが届きました。北野さんは今回、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』でその内容を紹介するとともに、メッセージ中の「日本の次期総理は誰が?」という問いへの回答を記しています。
中国にいて思うこと
上海在住のYさまから、メールをいただきました。大変興味深いメールですので、シェアさせていただきます。
初めてメールさせていただく、上海駐在のYと申します。私がこちらに駐在になってから10年が経ちました。
私の職場と住んでいる場所は、上海郊外の日系企業が大変多く集まる街になりますが、やはり周りの風景も、生活環境も、人々の様子も、ずいぶん変わりました。特に最近は、日系企業や日本人がだいぶ少なくなり、以前は日本人が多く利用していた飲食店の従業員は、みな声をそろえて日本人が少なくなったといっています。日本人相手のカラオケもほとんどなくなってしまいました。
さて、10年住んでの私の中国感ですが、私の周りにいる中国人たち(ほとんど仕事関係ですが)は、日本人を悪く言う人は一人もいないし、危険な目にあったことも一度もなく、一般のひとたちはいたって普通の、日本人とそう変わらない気がします。
もちろん、よく言われている、見栄っ張りだったり、自分の非を認めようとしないとか、声が大きいとか、そういったところはありますが、それは持って生まれた中国人気質であり、育った環境の差が大いにあると思います。
そして一般庶民は、政府が考えているような、中国は世界一の覇権国家になるなどとはあまり考えてもいないでしょうし、それよりも自分や家族の幸せだけを考えているように思います。それこそ、北野さんの言われる家族大切主義が最も強い国なのではないでしょうか。
一方の政府ですが、とにかく目に見えるものは見栄え良くし、交通ルールや環境衛生など、とても厳しく取り締まっていて、世界の先進国に追いつけ追い越せと躍起になっている感じがします。おかげで、以前と比べて、空気も少しずつきれいになってきましたし、水も道路もしかりです。
ただ、市内では、昔の中国っぽい建物やお店がどんどん取り壊され、通りから目に見えるマンションは壁をきれいに塗られ、古き時代の上海らしさがどんどんなくなっていき、寂しくも感じます。また、夜の遊びもかなり厳しく取り締まられていて、若者たちの性のはけ口である、いわゆる床屋も全く見なくなりました。どこの国でも、年月とともに近代化の波で大きく様変わりしていくのは、当然なのでしょうけれど。
でも、この国はそれが極端な気がします。一党独裁なのですべて政府の言いなりで、簡単にことが進められることもあるのでしょうが。でも、そんなに急激にものを作りかえたり、人々の生活を厳しく取り締まったりしていると、いつかその反動や反発が来るような気がします。今は目に見えて、経済の状態が悪くは感じませんが、きっと北野さんの言われる通り、近い将来この国の体制も大きく変わるかもしれませんね。