なぜ血みどろの「米中貿易戦争」は日本にとって良いことなのか?

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9月24日、米国は中国への関税UP第3弾として日用品など2000億ドルに10%の関税UPを実施しました。ますます激しさを増す「米中貿易戦争」ですが、この「血みどろ」の戦いに日本も巻き込まれてしまうのでしょうか? メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、この米中貿易戦争は日本にとって良い面もあるとして、その根拠や背景を詳しく解説しています。

地経学で見る米中貿易戦争と中東情勢

今週も米中貿易戦争やシリア内戦で大きな動きがあり、その検討を継続する。

0. 「日本4.0」

エドワード・ルトワックの本『日本4.0』を読んだが、1.0の江戸幕府で平和の構造ができ、2.0の明治維新で西洋文化を取り込み、3.0の戦後体制で軍事から経済にシフトして発展してきた日本が、今変革の時を迎えている。米国が世界の覇権を放棄して、日本は自分で自分を守る必要があり、独自の戦略が必要になっている。『日本4.0』は、その変革をどのように考えたらよいかの提案である。

日本は、敵国に侵入して情報を取る情報機関や少人数で作戦ができる特殊部隊が必要であるが、米国のような大掛かりな特殊部隊ではなく、イスラエルのような少人数で犠牲を覚悟した作戦ができる部隊の育成が必要であるという。

もう1つが、政治軍事の地政学より地経学の時代になるという。大規模な軍事作戦ができない状況になり、経済的なツールによる外交が重要になってくるとしている。

この「地経学の戦い」が米中間で始まった。それが貿易戦争であるようだ。この本の内容は、このコラムで議論したことばかりであるが、ルトワックの良さは、そのネーミングの仕方でしょうね。

詳しく知りたい方は、エドワード・ルトワックの本『日本4.0』を読んでください。

1. 米中貿易戦争の第3弾

米国は、第1弾として7/6に半導体など340億ドルに25%の関税UP、第2弾として8/23に化学品など160億ドルに25%の関税UP、そして今回、第3弾として9/24に日用品など2000億ドルに10%の関税UPを実施する。中国対抗処置を取ったら、2370億ドルの輸入品にも10%の関税UPを行うと警告した。

対して、中国も第1弾、第2弾までは同額の処置を取ったが、第3弾では600億ドルに10%関税UPと米国と同額にできなかった。輸入量が1300億ドルしかないので、追従できなくなってきたことによる。そして警告を無視し、かつ米国との通商交渉も拒否した。

今後を見ると、米国は、2370億ドル分の輸入品への関税UPや為替操作国指定や投資制限、留学生制限、国有企業への制裁などができる。特にドル決済を使わせないことで、国際決済を難しくできる。

対する中国は、米国債売却という大きな武器がある。その他に米国企業製品への不買運動、人民元通貨圏を拡大して、国際決済ができない制裁を掻い潜るために、米国の地経学上の武器であるドル基軸通貨制度を崩壊させる方向になる。

米国債の売却は不利益もあるが、新規米国債を買わないだけで、米国債の金利上昇が起きる。事実、最近10年国債の金利が3.4%になり、もし、本格的に米国債売却が始まれば、金利6%になるとアナリストは言う。米国債の暴落が起きる。

米中貿易戦争は、中国も大変なことになるが、米国の経済も弱めることが確実である。貿易戦争に勝者はいない。血みどろの戦いになるだけだ。

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