菅官房長官が異例の渡米、その「真の目的」は何だったのか?

arata20190516
 

5月9日からの4日間に渡る米国訪問を終え、12日に帰国した菅義偉官房長官。今回菅長官に課された任務は対北朝鮮交渉ルートの確認とされていますが、なぜそのような役割が、国の危機管理をあずかる立場の官房長官に託されたのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんが自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、その裏側を探っています。

菅官房長官が訪米した真の目的

安倍首相が北朝鮮の独裁者、金正恩に会いたいと言い出した。条件は付けないという。つまり拉致問題に進展があるなしに関わらず直接会って話すのだと、思いつめている。

いったい何があったのか。あれほど、「対話より圧力」を貫いてきたというのに。

「制裁を緩めるな」と訴える拉致被害者家族の気持ちは複雑だろう。トランプ大統領への「抱きつき外交」で世界に名を馳せる安倍首相が中途半端に方針転換しないかと心配しているに違いない。

だが、日本政府は金正恩にアプローチする交渉ルートを持っているのだろうか。小泉訪朝は、田中均氏が外務省アジア大洋州局長だったころ、「ミスターXとのチャネルをつくったから実現した。いまはそんなパイプがあるとは思えない。

余談だが、田中均氏は安倍首相から蛇蝎のごとく嫌われている。というのも、かつて田中氏が毎日新聞のインタビューで、こう語ったからだ。

「安倍首相の侵略の定義や河野談話、村山談話をそのまま承継するわけではないという発言などで、いわゆる右傾化が進んでいると思われ出している。中韓に日本を攻撃する口実を与えてしまっているという面はある」

安倍首相の歴史認識が中国や韓国に日本攻撃の格好の材料を提供しているという、ごく常識的な見方だが、安倍首相は2013年6月の自身のメルマガで、これに噛みついた。

毎日新聞のコラムで元外務省の田中均氏が、安倍政権の外交政策について語っています。11年前…を思い出しました。拉致被害者5人を北朝鮮の要求通り返すのかどうか。彼は北朝鮮の要求通り送り返すべきだと強く主張しました。私は…「日本に残すべきだ」と判断しました。田中局長の判断が通っていたら5人の被害者や子供たちはいまだに北朝鮮に閉じ込められていた。…外交を語る資格はありません

しかし、田中氏の努力で、閉ざされていた北朝鮮への扉が開かれたのも確かである。

「ミスターX」とは柳京リュ・ギョン)という人物をさすとみられる。韓国情報当局によると、北朝鮮の秘密警察国家安全保衛部の副部長だったようだ。

それまでの交渉窓口は、朝鮮労働党書記金容淳氏だったとみられる。自民党実力者、野中広務氏らはこのルートを温存するためもあって、莫大なコメ支援を続けた。ところが、金容淳氏が失脚したため、代わって柳京氏が登場し、田中均氏の交渉窓口となった。

2001年4月、首相になった小泉純一郎氏はまず、その年の10月に北朝鮮への50万トンのコメ支援を実施。翌年2月、田中真紀子外相更迭で小泉人気にかげりが見えはじめると、拉致問題の解決による政権浮揚をめざした。

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