【書評】国中で独裁者・習近平のご機嫌をとり続けるおかしな国

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国民に政治的な自由を一切認めない代わりに、個人の自由を与えてきた江沢民・胡錦濤政権。しかしその後を継いだ習近平がとった政策は、自由が徐々に減っていく「毛沢東の時代」をなぞったものでした。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「元中国人」の石平さんと中国に関する著書を多数上梓している安田峰俊さんの共著を紹介する形で、習近平政権の本質に迫っています。

習近平政権の本質

915gGQ9HZUL「天安門」三十年 ~ 中国はどうなる?
石平 安田峰俊 著/扶桑社

先日、面白い本をプレゼントしていただきました。『「天安門」三十年 ~ 中国はどうなる?』です。いろいろ面白い話が満載ですが、読者の皆さんには、「習近平政権の本質」が興味深いだろうなと思いました。

江沢民、胡錦涛政権の本質

2012年、習近平体制がスタートしました。その前は、江沢民胡錦涛の時代です。彼らの時代の本質は、どうだったのでしょうか?石平さんが、興味深い解説をしておられます。

江沢民が13年、胡錦涛が10年間という、ポスト「天安門」の23年間の政権がとった政策は、「国民に政治的な自由や民主主義は一切与えない代わりに、個人の自由をほぼ無限大に与える」というものでした。
(p152)

これ、「メチャクチャ面白い」と思いました。普通、「民主主義個人の自由、「セットでひとつ」と認識されています。しかし、中国の場合、「民主主義はないのに、「個人の自由はあった」というのです。どういうことでしょうか?

  • 海外に自由に旅行できるようになった
  • ポップカルチャーが自由だった
  • クリスマスが祝えた
  • メディアに自由があった
  • インターネットも自由だった

これらが「民主主義はないけど、個人の自由がある状態」なのですね。江沢民、胡錦涛時代、中国国民はどうだったのでしょうか?

あの23年間は中国人民にとって、いい意味でも悪い意味でも我が世の春でした。もちろん、経済成長に取り残されて苦しんでいる貧困層も多いけれど、全体的に言えば生活水準は向上した。
(p153)

右肩あがりで収入が上がっていったし、そこそこ自由はあるし、幸せだったのですね。とはいえ、石平さんにいわせると、江沢民胡錦涛政権の本質は、こうなります。

結果、共産党がどうなったかというと、「みんなで一緒に腐敗しよう、和気あいあいと腐敗しよう」というような、腐敗の利益共同体みたいな集団になった。みんなで腐敗すれば、政治闘争も権力闘争も不要なわけです。「おまえが賄賂を取る分、俺も取る」」という一種のバランスがとれます。胡錦涛政権時代の典型である集団的指導体制の正体はこれです。
(p152)

ちなみにこの時代のことを、ルトワックさんは「中国1.0」とよんでいます。中国は急成長しているのに、世界を警戒させることがほとんどなかった。「平和的台頭」について、ルトワックさんは、「もっとも成功した戦略」と大絶賛しています。

そして、ジョージ・ソロスも09~10年頃は、「中国の体制はアメリカよりも機能的だ」などと、褒めまくっていた。別に中国の内部が腐敗しまくっていても、他の国に迷惑をかけなければ、「よしとしよう」ということなのでしょう。

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