今国会中に改正を目指している動物愛護法に、販売する子犬・子猫へのマイクロチップの装着義務化が盛り込まれる見込みとの報道がありました。これに不安を覚えたメルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の読者から、著者で米国在住の医学博士・しんコロさんに質問が届きました。しんコロさんによれば、健康被害の報告は稀にあるものの因果関係は明らかになっていないそうで、日本の場合には、制度導入前に整えておくべき環境面での問題があるのではないかと指摘しています。
犬猫へのマイクロチップ義務化の動き。問題はない?
Q.マイクロチップについての質問をさせてください。日本で犬猫への装着義務化の動きがあります。私としては、体の中にへんなものをいれることに、抵抗があります。体によいとは思えないので反対なのですが、アメリカではどのような運用がされていますか。また、マイクロチップが原因のガン等問題になっていることがあれば教えていただきたいです。よろしくお願いします。
しんコロさんの回答
日本での犬猫へのマイクロチップ装着義務化に関するニュース、僕も興味深く見させてもらいました。反対派の意見として、質問者さんのように体に異物を入れることに対する抵抗感があります。
僕たち日本人はペットなどの動物を「なるべく自然な状態にする」というのを好みますし、ましてやマイクロチップは日本ではまだ馴染みが薄いので、拒否感が生じるのは仕方のないことだと思います。
ちなみに、マイクロチップを入れている部分にがんができた犬猫は稀に報告されますが、それがマイクロチップのせいかどうかはいまいち不明です。
アメリカ獣医師協会は、マイクロチップを入れることでがんができる可能性は極めて低く、一方でその「ガンができる(極めて低い)リスク」を心配するよりも、万が一ペットが行方不明になった時に取り戻せる可能性を高めた方が良いと述べています。
日本での義務化の反対派のもう一つの意見として「チップが入っていない野良猫が殺される懸念が高まる」というものがあります。自治体によっては飼い主が不明の猫は殺処分をするという所もあるそうで、そういった地域ではマイクロチップが入っていない猫はより殺される可能性が高くなるのではないか、という意見です。
二次的な影響ですが、確かに可能性としてなくはないと思います。マイクロチップの役割は、シアトルのように殺処分をしないシェルターという土台があってこそより動物愛護に貢献すると思います。そういった土台のない日本で全面義務化をすると、どこかにひずみが生まれることは間違いないでしょう。
僕の個人的な意見としては、まずは殺処分をしないシェルターなどを構築して、その自治体をモデル地区としてマイクロチップの義務化を実験的に行ったら良いと思います。様子を見ながら徐々に行い、段階に応じて軌道修正をしながら進めるのが良いと思います。
ちなみに、アメリカでのマイクロチップの運用は州によってまちまちのようです。しおちゃんとティーちゃんが保護されていたシアトルのシェルターでは、引取時にマイクロチップを入れるのが義務となっているようです(入れるか入れないかの選択も訊かれませんでした)。
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