5月4日午前、北朝鮮が日本海方面に数発の飛翔体を発射。その前日には、国連の食糧機関が北朝鮮の食糧事情が飢餓状況に近いと警告を発したばかりであり、国民の窮状をよそに、いったい何が目的なのでしょうか?メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で、北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さんは、米露と続いた収穫のない会談も記録映画にし感想を求めるなど、金正恩の「裸の王様」化の加速を伝えています。
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北朝鮮に再び飢餓状態の危機
北朝鮮が5月4日午前9時過ぎに、日本海側に向けて数発の飛翔体を発射した。日本の排他的経済水域には飛んで来なかったようだが、なぜ、この時期にこのようなことをしたのか。
ハノイでの第2回目の米朝首脳会談が「不発」に終わり、意気揚々として出かけたロシアのプーチン大統領との会談でも、思ったほどの「収穫を得られず」、ロシア側が準備した行事をキャンセルし、さらには、いかにも大物らしく見せるためにか、予定された訪問日程を切り上げて帰国してしまった。
それでも北朝鮮の国営テレビは4月28日夜、金正恩のロシア極東ウラジオストク訪問の記録映画を放映した。25日に首脳会談会場の玄関で車を降りた金正恩が、出迎えるプーチンロシア大統領を見て笑顔を見せる場面や待ち構えた大勢の外国報道陣も映し出した。北朝鮮得意の「弱者の恫喝」ならぬ「弱者の猿芝居」であった。
トランプ大統領との会談のときのように「世界が注視した世紀の会談」を演出したのである。この記録映画は北朝鮮の全地域で放映され、学生も労働者も全員鑑賞させられ、さらには感想文を書かされ、発表しなければならない。
「裸の王様」に過ぎない金正恩が、トランプ大統領と2度の会談を持ち、さらにプーチン大統領とも会談したことによって、金正恩がいかにも世界を代表するような指導者像を作り上げているが、それは北朝鮮内でのことであり、国連の食糧機関は北朝鮮の食糧事情が飢餓状況に近いことを警告している。
北朝鮮は「モネギチョントゥ(田植え戦争)」が始まった。飛翔体を飛ばしている余裕があるのか。この原稿を書いているときに、韓国の知人から「宮塚さん、北朝鮮の金日成と金正日、金正恩の“残酷な血の粛清”について、調べてくれないか?」と言ってきた。次稿で2回にわたりこのテーマをお伝えする。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)