スマホメーカーを死に追いやる、ドコモ「分離プラン」という愚策

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先日掲載の「NTTドコモ『4割値下げ』に見えなくもない『苦肉の策』は損か得か」で紹介したドコモの新料金プラン。この記事内でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、「ユーザーに混乱をもたらす最悪の結果になりそうだ」との懸念を示しましたが、スマホメーカーも大打撃を受ける可能性があるようです。一体なぜなのでしょうか。石川さんが自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』にその理由を記しています。

決算から見えてきた分離プラン導入による「メーカー撤退危機」――NTTドコモは月々サポート廃止で900億円の収益改善

10連休を前にして、キャリアやメーカーの決算会見が相次いだ。それらの数字を見ると、NTTドコモの分離プラン導入を契機に、スマホメーカーにとって事業の存続が危うくなる未来が見え始めてきた。

NTTドコモでは2018年度の実績として、2,442万9,000台の総販売台数を計上。しかし、2019年度の計画では分離プラン導入の影響で2,250万台となり、実に200万台近い販売台数の減になると予想している。

もちろん、この影響はもろにスマホメーカーを直撃することになる。ソニーはすでに2017年度に1,350万台あった販売台数が2018年度には650万台と半減。2019年度も「販売台数の大幅な減少」を予想している。

また、京セラに関しては、engadgetの報道によれば谷本秀夫社長が「携帯電話事業を続けるか他へ行くのかはここ2~3年の課題。(中略)一般的な予想として、5Gが早期に普及しないのではないかという見解がある。5Gスマートフォンは高価になる傾向があるので、ゆっくりとした普及になるのではないか」と言及したという。

5Gが急速に普及しない理由はもちろん、分離プランの導入だろう。このタイミングで端末への割引がなくなれば、当然、ハイエンドモデルの売上が鈍るわけで、5Gの普及のあしかせになるのは明らかだ。京セラはどちらかといえば、ミドルクラスのスマホに強く、分離プランはむしろ追い風になるかと思いきや、京セラであっても、事業の撤退を匂わすということは、分離プランの導入がメーカーを死に追いやる愚策であることは明らかだ。

ただ、キャリアにとってみれば、分離プランの導入は決してマイナスではない点もある。NTTドコモの決算会見で、筆者が「分離プラン導入によって月々サポートが6月からなくなると思うが、その収益構造はどうなるのか」と吉澤社長に訪ねたところ、こんな回答が返ってきた。

「2019年度のお客様還元による収支の影響は2,000億円の減。ただし、これは値下げの影響が2,500億円だが、月サポがなくなる分で900億円の戻りがある。これで1,600億円の減になるのだが、docomo with分が400億円分あるために合計で2,000億円という計算になる」とのことだった。

つまり、総務省が推し進めた分離プランによって900億円分キャリアにとっては収益が改善したということになる。この900億円は3キャリアでの競争に使われていたわけでもあり、ユーザーはスペックの高い端末を手軽に手に取れていたわけだ。

確かに通信料金は値下げされたかもしれないが、多くのユーザーがスマホに慣れることで、月々のデータ使用量は増えていき、結果として支払う額も上がっていく。通信料金の値下げによる影響は限定的ですぐに収益が回復するのは間違いない。つまり、キャリアにとってみれば、分離プランの導入により、経営上、負担であった端末割引からおさらばできる絶好のチャンスだったのは明らかだ。

分離プランの導入により「結局、最終的にはキャリアが得することになる」ということに、総務省はなぜ気が付かないのだろうか。

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