現在音読教室を主催されている、元アナウンサーの和貝晴美さん。かつて重篤な鬱病に悩まされていた和貝さんを救ったのが、「耳活」でした。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、積極的に耳を使うことの効能、音読が脳に与える影響を、和貝さんご自身の体験をもとに紹介しています。
うつ病に苦しむ女性を救った「朝の音読」
重度の鬱病がもとでアナウンサーの仕事を失い、さらに離婚、生活困窮と、幾重もの試練に見舞われていた和貝晴美さん。
奈落の底で見出した一筋の光明が“音読”だったといいます。音読は人間の心身にどのような影響を与えるのでしょうか。
現在発行されている『致知』最新号より、記事の一部をご紹介します。
──和貝さんは、アナウンサーのご経歴を生かして、大阪で一般向けの音読教室をなさっているそうですね。
和貝 「はい。私の主宰する教室や東淀川区の高齢者福祉施設で、皆さんと一緒に文章を声に出して読む喜びを分かち合っています。
最初は自作のテキストを使っていたんですけれど、致知出版社さんから出た『楽しみながら1分で脳を鍛える速音読』(齋藤孝・著)を見たら、文字が大きくて読みやすいし、文章も長過ぎないし、これまで知らなかったいろんな名文に触れられる。
これはいいと思って使い始めました。皆さんも『わくわくする』ってとても喜んでくださっているんですよ。
それと、教室に通ってこられるのは60代、70代の方が多いのですが、この速音読が認知症患者に「劇薬」とさえいえるほどよく効くと書かれているのを知って、グッと意欲的になられました。
~(略)~
──音読指導を手掛けるまでのいきさつをお話しください。
和貝 「実は、フリーアナウンサーだった平成28年頃に鬱病を発症して、2年くらいは日常の記憶がほとんどないくらいに酷い時期が続いたんです。
──あぁ、そんなに重篤だったのですか……。
和貝 「最近は、鬱病というのは脳の機能がダウンする病気だとだいぶ知られてきましたけれど、当時はまだ原因のよく分からない精神病のカテゴリーに入っていて、いろいろ本を調べてみても、自分に何が起きているのかよく分からず、とても不安でした。とにかく心がいつも苦しくて、外からの刺激に対する反応が鈍くなるので、人とコミュニケーションを取るのが辛いんです。
特に酷かったのが体の痛みでした。
酷い失恋をした時のような、矢で心臓を刺されるような胸の痛みや、上半身の痛みがずーっと続くんです。その頃はよくホテルで式典の司会をしていたんですけれど、進行の合間に裏で体を叩いてはまたマイクの前に立っていました。
結局仕事はできなくなり、とうとう生活困窮者のための福祉制度に助けられて生活することになりました。
そこからはもう自宅で寝起きするだけの毎日で、テレビを観ても何を言っているのか分からない、音楽を聴いても感動しない、どんどんいろんなものに反応できなくなっていきました」