今の経営陣は退陣せよ。日本メーカーが今後、世界で生き残る方法

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27日にブログ記事「NTTの株価総額が世界一だった時に、Microsoftに転職した理由」がネット上で大きな話題となった元MicrosoftでWindows95の設計に携わった世界的エンジニアの中島聡さん。その中島さんは今回、自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で「ネット時代のハードウェア企業」と題して我が国の家電メーカーや自動車メーカーの後を継ぐビジネスの設計について、「伝説のプログラマー」と呼ばれるにふさわしい自身のアイディアを披露しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年11月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

ネット時代のハードウェア企業

最近、経団連の事務所にようやくパソコンが入っただの、サイバーセキュリティの担当大臣がパソコンを使ったことがないなど、日本の情けない面ばかりが強調されています。

やはり一番問題なのは、終身雇用制や日本政府の護送船団方式により、変化の時代に必要な、人や企業の新陳代謝が進まないことにあると思います。

とは言え、文句ばっかり言っていても始まらないので、日本の若い人たちが活躍できる場を作りたいと思うし、彼らが今後、どんな戦い方をしていくべきかを一緒に考える必要があると考えています。

その中で、私なりに答えを見つけたいと考えているのが、日本の高度成長期を支えて来た、家電メーカーや自動車メーカーの後を継ぐビジネスの設計です。

これからはソフトウェアの時代なので、GoogleやFacebookに対抗するソフトウェアやウェブサービスの会社やビジネスをすれば良い、という考え方もありますが、やはり日本が持つ優秀なハードウェア技術者や、ものづくりの文化を生かした、どちらかというとAppleやTeslaのさらに先を行くようなハードウェア+ソフトウェアのビジネスを作るのが良いのではないかと、考えています。

私はこれまで、パナソニック、ソニー、NEC、リコー、コニカミノルタ、トヨタ自動車などの、いわゆる日本のハードウェア・メーカーと様々な形で仕事をして来ましたが、それを通してつくづく感じるのは、「せっかく良いものを持っているのに勿体無い」という感覚です。

ソフトウェア・エンジニアの立場から言えば、ソフトウェアだけで出来ることは限られており、もしハードウェアを自由に作ることが出来たら色々と面白いことが出来るとつくづく感じます。その意味では、AppleやTeslaのような物作りの姿勢が、私にとっては理想です。

しかし、現状のハードウェアメーカーを見る限り、それが出来るとは私には思えません。まず第一に、経営陣がソフトウェアのことが全く分かっていません。また、ソフトウェアに関しては、実際のコーディングを下請けに任せるゼネコンスタイルが蔓延しているため、良いエンジニアが社内に育っていません(ゼネラリスト・管理職ばかりです)。

じゃあ、どうすれば良いかというと、まず、ソフトウェアのことが分かっている、ビジョンとリーダーシップのある経営者をトップにおきます。学生時代からソフトウェアに関わっていなかったような世代の人たちには退陣してもらい(50代の大半と、40代の多く)、パソコン・インターネット・スマホを使いこなして育って来た、デジタル・ネーティブな世代の人たちの中から会社をリードしていける人を生み出す必要があります。

そして、「ハードウェアを作る」「ハードウェアを売る」という発想から、「顧客が抱える問題を解決する」「顧客に価値を提供する」発想に転換します。この発想の転換は、従来型のビジネスモデルでの成功体験を持つハードウェアメーカーにとっては、難しいことですが、必ず行わなければなりません(これも、今の経営陣にトップから退いてもらう理由の一つです)。

自動車メーカーであれば、「自動車を作って売る会社」から「移動手段・運搬手段を提供する会社」に生まれ変わらなければなりません。トヨタ自動車は、Uberとの提携を発表しましたが、残念なことに、そこにはUberにトヨタ製の自動車をより多く買ってもらおうという発想しかありません。そうではなく、Uberを丸ごと買収してしまう、もしくは、Uberがやろうとしている自動運転によるモビリティ・サービスを先に作ってしまう、という発想が必要なのです。

全てを提供するフルスタックな会社になる必要はありませんが、顧客から「この会社のサービスを受けていると認識してもらえる立場に立つことは必須です(それが出来ないのであれば、逆に、村田製作所のように、B2Bの黒子に徹するべきです)。

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