一大ブームに乗って作られた数々の仮想通貨・ICOのうち、800ものプロジェクトがすでに死んでいるという。なぜここまで被害者が増えてしまったのだろうか。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)
※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年7月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
何も産み出さない仮想通貨。なぜ被害を抑えられなかったのか?
仮想通貨ブームは去ったのか
インターネットの発明にも匹敵する未来の技術だとされるブロックチェーン。昨年末頃には、それを活用した仮想通貨や、仮想通貨で資金調達するICOなどが一大ブームを迎えていた。
最近も名の通った新興証券会社が仮想通貨市場に進出したばかりなので、過去形ではなく、ブームは進行中だとすべきかもしれない。
800もの仮想通貨が死んだ
とはいえ、少しばかり気になる記事をCNBCで見かけた。
しかしながら、何百ものこれらのプロジェクトは既に生きていない。つまり、詐欺や、冗談、あるいは話だけで終わっているものが多いからだ。
デッドコインというウェブサイトは、それら死んだ仮想通貨のすべてを、リストアップしている。
これまでのところ、過去18カ月間に、800強のデジタル通貨が死んだとされている。これらの仮想通貨は価値がなく、1セント以下で取引されている。
ICOを通じては、2017年に38億ドルが調達されたという。それが2018年の前半だけで119億ドルに達した。過去18カ月で合わせて157億ドル。1兆7000億円を超える。
そのすべてが無とはなっていないとしても、大変な金額が失われたことは間違いがない。
上記の記事では、ビッドコインも高値から70%下落したとある。もっとも、7月に入ってビッドコインは10%以上上昇したようだ。
何も産み出さない仮想通貨
私は何年か前にビッドコインが出てきた頃から、仮想通貨には否定的だ。なぜなら、「詐欺や、冗談、あるいは話だけ」で、何も産みださないからだ。
むしろ、マイニングでは人力と、電気やコンピューター、そのメモリーをいたずらに消費だけする。消費も確かに経済に貢献するが、仮想通貨では消費に伴う生産がない。
一方、仮想通貨のマイニングや取引を、サービスや文化と見なすには、あまりにも低次元だ。
私は当初から述べているが、通貨の本質的な価値は流動性だ。
一般的に使えないものを通貨と呼ぶのは、「詐欺や、冗談、あるいは話だけ」に近い。使用に制限や限界があるものは、商品券や、遊園地など園内でだけ使えるトークンと呼ぶべきではないか?
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