異業種から新規参入した企業の折りたたみ自転車が売れている理由

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異業種から新規参入した分野で成功をおさめるのは大変なことですが、見事に成し遂げている企業が話題となっています。既存の折りたたみ自転車ユーザーが抱えていた「不満」を解消し、よりクオリティの高い製品を提供することにより支持を確実のものにしたそのメーカーの戦略と戦術を、MBAホルダーの青山烈士さんが今回、自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で分析しています。

異業種からの参入

今号は、人気の折りたたみ自転車を分析します。

● 精密板金を主として事業展開している「テック・ワン」の折りたたみ自転車ブランド「CARACLE(カラクル)

戦略ショートストーリー

自転車を持ち運びたい方をターゲットに「金属加工メーカーとして培ったノウハウや特許技術」に支えられた「持ち運びやすい」「走りやすい」等の強みで差別化しています。

気軽に持ち運べることの価値をSNSなどで訴求し、実際に様々な用途で活用できることが、消費者から支持を得ています。

■分析のポイント

折りたたみ自転車ブランド「CARACLE(カラクル)」を生み出した企業である「テック・ワン」は精密板金を主として事業展開している企業です。ですから、異業種から自転車製造に参入したということになります。

異業種から参入して、世界最小の折りたたみ自転車を作ることは容易ではありません。長年自転車を作ってきた企業とは異なり、自転車づくりのノウハウを持っていたわけではないですからね。小さくするだけでなく、高い走行性能を実現することは非常に困難なミッションだったと言えるでしょう。

この困難なミッションをクリアできた要因として考えられることは2点あります。一つ目が、自転車も金属でできていますので、約80年にわたり金属加工メーカーとして培ってきた金属加工の技術が応用できる分野であったこと。これは新規事業を始める上で非常に重要なポイントです。

自社が持つ能力を活かすことができなければ、新たな市場に参入して自社のポジションを築くことは非常に困難ですし、差別化するには、既存企業と同じことができるレベルではなく、既存企業が真似できないレベルの能力を持っていることが重要となります。

この既存企業が真似できないレベルの能力を発揮するカギとなるのがクラフトマン職人集団の存在です。「テック・ワン」が抱えるクラフトマン(職人)集団が取り扱う製品は制御装置や各検査装置・各種盤・BOX・コンピュータ関連等多種多様にわたっています。これらの多種多様な製品づくりで培ったノウハウ・能力は他社が真似することは困難ですし、このノウハウ・能力があったからこそ、業界の常識にとらわれない折りたたみ自転車「CARACLE(カラクル)」をリリースできたと言えるでしょう。

二つ目が、折りたたみ自転車のユーザーの多くが折りたたむことなく使用しているという現状に気づいたこと。異業種から参入したからこそ気づけたのかもしれませんね。

この使用状況からユーザーが折りたたんで「持ち運べるというメリットを受け入れて楽しめていないということが読み取れます。つまり、多くの既存の折りたたみ自転車が「持ち運べる」という価値をユーザーに届けられていないということです。

ここにフォーカスを当てたからこそ、「CARACLE(カラクル)」は「気軽に持ち運べる」ことにこだわり市販のスーツケースに収納できるサイズにこだわったのだと思います。「気軽に持ち運べる」ということは、持ち込んだ先で楽しめることも求められますので、「CARACLE(カラクル)」の場合は、走行性能にも非常にこだわっています

このように既存の折りたたみ自転車が満たせていない「持ち運びやすさ走りやすさ」にこだわることで新規参入でありながら、折りたたみ自転車市場のなかで、存在感を発揮できているのです。

今後、「CARACLE(カラクル)」がどのように進化していくのか注目していきたいです。

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