国も推進する「兼業」がブームになりつつあるようですが、兼業許可を通さず社員と揉める企業もあるようです。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、会社側に兼業を許可されなかった社員が起こした裁判の結果と、今後企業が気を配るべき事柄を記しています。
兼業を不許可にされたことで損害賠償は認められるのか
兼業がブームです。ツイッター上では「兼業を認めるのは長時間労働を増やすだけ。それよりも賃金あげろ!」などというつぶやきも話題になりましたが私は基本、兼業には賛成です。いろいろな会社で実務経験をすることは自分の成長にもつながると思うからです。会社勤めをしていた頃もいろいろな会社を兼務したいと思っていましたし(実現はしませんでしたが)、実際にしている人に対して憧れもありました。
ただ、この兼業は管理する側(会社もしくは担当者)にとっては非常に悩ましい問題でもあります。
それについて裁判があります。
ある運輸会社で、社員が別の会社でのアルバイトの許可申請を提出しました(この会社では兼業は許可制でした)。すると、会社側が不許可としたためこの社員が「不許可にするのは違法だ!」として、会社を訴えたのです。
では、この裁判はどうなったのか?
以前ですと「兼業・副業は禁止する」と就業規則に明記し認めない会社が大半でした。逆に社員の方も「いかにばれないようにアルバイトをするか?」ということを工夫(?)してこっそりと行うことが多かったでしょう。
それが現在は国全体が「兼業、大歓迎!」のような雰囲気になり(すいません、ちょっと大げさかも知れませんが)厚生労働省の就業規則もそのような内容に改定されています。
そうなるとこの社員側が有利に思えるかも知れませんがとは言え、損害賠償までは…、と考える人が多いのではないでしょうか。
結果です。
会社が負けました。裁判所は慰謝料として30万円を支払うように会社に命じたのです。
いかがでしょうか。
ただ、これは「会社は兼業を認めなければいけない」という意味ではありません。許可制にして不許可にすることももちろん可能ですし、そもそも兼業を認める制度を入れることも強制ではありません。現状で残業が多い会社であれば兼業を認めることでさらに長時間労働をすすめてしまうことになりますし、業種や職種によっては情報漏えいの危険性が高い場合もあるでしょう。また、法律面でも労働時間の通算などでまだまだ不透明なところもあります。
ただ、一方で今後については「兼業不許可」に対するリスクも高くなってくるでしょう。現状で「兼業許可制」を入れている会社であればその許可基準を見直す必要もあるかも知れません(通算何時間以上であれば認めないがそれ未満は認める、情報漏えいの危険性からこの職種、業種との兼業は認めない、それ以外は認めるなど)。
また、採用においても「兼業禁止」の会社と「兼業大歓迎!」の会社では募集効果に差が出てくる可能性もあります。今すぐに「兼業許可!」とはしないまでも検討は早めにしておいたほうが良いかも知れませんね。
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