ペッパーフードサービス<3053>が好調です。立ち食いステーキの「いきなり!ステーキ」が大ブームとなり、飛ぶ鳥を落とす勢いで業績が拡大しています。最近では、米ナスダック市場にADR(米国預託証券)を上場させ、グローバル展開も視野に入れます。
株価も2017年初からその年のうちにテンバガー(10倍株)を達成し、現在も6倍の水準を維持しています。
ところが、時計の針を巻き戻してみると、2007~2010年にかけて最終赤字を計上し、一時は「継続企業の前提に関する疑義」が記載されるなど、まさに倒産寸前の状況であったことがわかります。そこから盛り返すまでに何があり、投資家はどの時点なら投資できたのかを考えます。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
ブームに乗って大躍進。立ち食いステーキの勢いはまだ続くのか?
相次ぐ不祥事で倒産寸前、ファンドにも裏切られ…
ペッパーフードサービスは、創業者で現社長の一瀬邦夫氏が創業したステーキレストランが源流です。1994年には、手軽に早くステーキが食べられる「ペッパーランチ」のチェーン展開を開始し、事業を拡大させていきます。
2006年に東証マザーズに上場し、順風満帆の船出に見えましたが、その後急激に暗雲が立ち込めます。2007年にペッパーランチ心斎橋店で、店長と店員による客の女性に対する監禁・暴行事件が発生しました。また、2009年にはO-157による食中毒が発生し、一層の顧客離れが進みました。
その結果、2007~2010年にかけて最終赤字を計上する事態となったのです。
4期連続の最終赤字となり、資金繰りに窮するようになりました。2009年末時点での現金残高はわずか5,800万円。いつ資金がショートしてもおかしくない水準です。このような決算状況では、銀行も融資してくれません。
状況を打開すべく、ファンド中心の投資団を引受先とする約2.8億円の第三者割当増資を決定します。しかし、公表後になってファンドが意を翻し、資金の払い込みを拒否する事件が起きました。受け取るはずだった2億円が白紙になってしまったのです。
※参考:(経過)第三者割当による新株式発行の一部失権に関するお知らせ(PDFファイル)
これを受け、同社は公表済みの有価証券報告書を訂正し、「継続企業の前提に関する疑義」を記載しました。これは、いつ会社が倒産してもおかしくないリスクを抱えているということです。頼りにしていたファンドには裏切られ、経営は風前の灯火でした。
難局を乗り切るためには、1にも2にも資金が必要です。まず、取引先の伊藤忠商事より買掛金の分割返済を認めてもらうことで急場をしのぎました。
その後、上記の第三者割当増資の引受先でもあった取引先のエスフーズ株式会社から1.8億円の融資を受け、さらに同社に新株予約権を発行することで長期的な資金の獲得にも目途をつけました。捨てる神あれば拾う神ありというところで、首の皮一枚生き残ったのです(ちなみに、エスフーズは新株予約権の行使により約2億円を投資して第2位株主となり、現時点で約90億円に大化けしています)。
しかし、何とか倒産を免れたとは言え、いばらの道は続きます。もし再び顧客の信頼を失うようなことがあれば、次こそは立ち直れなかったでしょう。投資家としては、このタイミング(2010~2011年頃)に投資することはあまりにリスクが大きすぎたと言わざるを得ません。