保存食・非常食のイメージが強い缶詰を、お酒のつまみとして特化させ話題となっている「缶つま」。1個500円と缶詰としては割高感もあるこの商品、それでも大ヒットしたカギはどこにあったのでしょうか。MBAホルダーの青山烈士さんが自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、その秘密を探ります。
消費者の利用シーン
国分グループが展開している「缶つま」にフォーカスをあてます。
● 缶つま
戦略ショートストーリー
家呑みを楽しむ方をターゲットに「こだわりの食材」に支えられた「お酒が美味しく飲める」「美味しいつまみが手軽に食べられる」等の強みで差別化しています。
お酒のつまみに特化した商品ラインナップの拡充に加えて、缶つまを使ったレシピを募集・公開することや様々なイベントを開催することで、顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
消費者の利用シーン
「缶詰」を使って作るおつまみを紹介する本の出版に協力したことが「缶つま」リリースのきっかけのようです。
なぜ、きっかけになったかというと「缶詰」が酒のつまみとして扱われているという消費者の「缶詰の利用シーン」の一つを知ることができたことが大きいと思います。消費者がお酒のおつまみとして扱うならそれ専用の「缶詰」を作りましょうという発想ですね。
言い換えると消費者の利用シーンに合わせて商品をカスタマイズするという発想です。この発想が今回の事例のポイントです。
この発想でヒットした商品やサービスは多いです。例えば、本メルマガで紹介した事例ではVol.115のボスティ(腹筋専門のパーソナルジム)は近い発想だと思います。
● 腹筋にコミットするパーソナルジム「ボスティ」が注目される理由
ジムで腹筋を中心に鍛えている方やお腹周りが気になる方がいることに気づいたからこそ、そういった消費者の利用シーンに合わせて腹筋専門のパーソナルジムという形の店舗に行き着いたのでしょう。
「缶つま」や「ボスティ」は消費者の利用シーンを知ることが新たな価値を提供することにつながるということを示している事例だと思います。
また、消費者の利用シーンに合わせた新たな価値を提供するうえで重要となるのが売り場の設定です。多くの「缶詰」が100円で買える世の中で「缶つま」の500円という価格は高いですよね。なぜ、そう思うのかというと当たり前ですが、100円のものと比較しているからです。
ですが、贅沢な気分を味わえるお酒のおつまみとしては「缶つま」の価格設定は、それほど高い印象ではないと思います。だからこそ、国分は自社の営業を活用して「缶つま」を酒売り場の近くに展開するように小売店に提案しているわけです。
これにより、消費者にとっての比較対象が100円の「缶詰」から「お酒のおつまみ」に変わります。
お酒のおつまみですと、おつまみ用のチーズなどがあると思いますが高級なチーズもありますので、チーズとの比較の場合は割高感は薄れると思いますし、おつまみの予算としては、問題ない価格帯といえるでしょう。
つまり、保存食としての「缶詰」とお酒のおつまみとしての「缶詰」では消費者の頭の中の「○○にはこれくらいお金をかけても良い」という支出の基準が異なるわけです。だからこそ、「缶つま」は缶詰売り場よりもお酒売り場の近くの方が、売れるのです。
少し長くなりましたので、まとめますと、消費者の利用シーンに合わせて酒のつまみに特化した高級路線の缶詰という売り物は、売り場づくりとセットで、「缶つま」のファンを増やすことに貢献しているということです。
現在、約100種類まで商品ラインナップが拡大していますが今後、「缶つま」がどのような存在になっていくのか注目していきたいです。