昨今、休みの日だけでなく、仕事終わりや出勤前にランニングする人をよく見かけるようになりましたが、こうしたランナーから圧倒的に支持されている靴下があることをご存じでしょうか。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、スポーツブランドの商品ではない「靴下屋」のランニング用ソックスが支持を得た理由とその販売戦略を分析しています。
機能を価値へ
市民ランナー支持率No.1のランニング・マラソン専用のソックスを分析します。
● 靴下専門店である「靴下屋」や「Tabio」を展開するタビオのヒット商品ランニング・マラソン専用のソックス「レーシングラン」
戦略ショートストーリー
ランニングをする方をターゲットに「靴下専門店ならではのこだわり」に支えられた『快適なフィット感』『疲れにくく、走り心地がいい』等の強みで差別化しています。
メイドインジャパンにこだわった高い品質・機能性が評価され、市民ランナー支持率No.1を獲得するなど、顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
機能を価値へ
大手のスポーツブランドでないソックスブランドが市民ランナー支持率No.1とはすごいことだと思います。今回はその要因を考えていきましょう。
まず大きな要因につながると思うのが、多機能であることです。アーチサポート機能、吸水速乾機能、消臭機能、滑り止め機能など様々な機能が織り込まれていることは、ランナーにとっては魅力的に感じるかもしれません。
ですが、機能が多ければ支持を得ることができるという単純なことではありません。重要なポイントとなるのがランナーの悩みの解決につなげることです。
・疲れやすいという悩みに対しては、アーチサポート機能により、土踏まずの部分を押し上げることで疲れにくい走りを実現する
・足にマメができやすいという悩みに対しては足の形に沿った立体製法により履き心地を改善することでマメができにくくする
・走り心地を良くしたいという悩みに対しては指先にフィットする立体製法により、従来の5本指ソックスよりも指先へのストレスを軽減することで、走り心地を向上する
・破れやすい、長持ちしないという悩みに対しては立体製法により、破れにくく、長持ちするようにする
といった形で、機能を価値に変換する。つまり、機能をランナーにとっての嬉しさにつなげることが重要ということです。さらに、
・習慣化できない、続かないという悩みに対しては上記の機能の価値変換により、走ることが楽しくなることはもちろん、グッドデザイン賞を受賞したデザインや豊富なカラーバリエーションがより、走りたくなる気持ちを喚起することにつながっています
デザインやカラーバリエーションといったものは商品の特徴ではありますが、その特徴が、ランナーにとっての嬉しさ、楽しさにつながらなければ支持にはつながりません。「レーシングラン」の場合は、デザインやカラーバリエーションという特徴が走りたくなるという嬉しさにつながっているわけです。
要するに「機能」や「特徴」をランナーの嬉しさ、楽しさにつなげていることが支持率No.1を獲得している要因の一つになっているということです。
また、大手のスポーツブランドよりも多くの顧客接点を持っていることもポイントになると思います。タビオはメーカーではなく、ベースは靴下専門店ですから日々、多くの顧客と直に接しているわけです。
これが何を意味しているかというとフィードバックが得やすいということです。フィードバックが得やすいと何が良いかというとリリース後すぐに商品改善に活かしやすいということです。恐らく、タビオでは、リリースして、顧客からのフィードバックを抽出し、商品改善につなげるというサイクルがうまく早くまわっていると思われます。こういった仕組みも、支持率No.1獲得に貢献しているのでしょう。
上記のように「レーシングラン」への支持は機能を嬉しさに変換した価値や仕組みに支えられていることが見えてきました。これからも支持率No.1の座を維持していけるのか、今後の展開に注目していきたいです。