それ風邪じゃなくて「結核」じゃない? 昔の話と思ったら大間違い

2016.09.28
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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結核と聞くと「昔に流行した病気」というイメージをもっている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、結核は一昔前の病気ではありません。

最近でも結核の集団感染をニュースがあったように、現在も感染する人がいる病気です。厚生労働省では、毎年9月24日~30日を「結核予防週間」と定めています。

今回は結核について、原因や症状、特徴を正しく知り、予防につなげていぎましょう。

結核って?どういう病気?

結核とは、「結核菌」という細菌が人から人に感染し発病する伝染性の病気です。

感染経路の多くは気道を通しての感染です。肺に感染することで肺結核となりますが、腎臓やリンパ節、骨、脳など、身体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。

今回は、結核のうち8割以上を占める肺結核についてご紹介していこうと思います。

肺結核の原因は?

肺結核は、結核菌に感染・発病した人が咳や痰、くしゃみなどをすることによって体外へ出され(排菌)、空気中で飛び散った結核菌を他の人が吸い込むことによって感染します(空気感染)。

そのため、集団の規模に関わらず、家庭や学校・会社などの集団に属し、人と接することがある限り、結核感染の危険性は0%ではありません。

ただ、この結核菌を吸い込んだからといって必ず感染するわけではありません。普段は鼻や喉、気管支にあるバリア機能が外部からの侵入を防いでいます。また、侵入したとしても、身体の免疫機能によって感染を防いでいます。そして感染しても免疫機能が働き、結核菌を抑え込むことで、発病しないこともあります。

このように、感染・発病を防ぐためには身体の免疫機能が重要になります。

ワクチン接種をしていれば大丈夫?

小さい頃にしたハンコ注射を覚えていますか?この注射は、「BCGワクチン」といって結核の重症化を防ぐためのものです。

毒性を弱めた「牛型(うしがた)結核菌」を接種し、軽い結核のような反応を起こさせることで、結核菌が侵入した時に備えて免疫をつけておくことが目的です。

子どもの結核予防に有効で、安全な予防接種として世界に広く用いられています。ただし、結核予防効果は十数年程度で、成人の結核に対する予防効果は高くないとされています。

風邪だと思っていた症状が肺結核?

初期の症状として、発熱や倦怠感、食欲不振とそれにともなった体重減少がみられます。結核の発熱は、午後から夕方にかけての微熱なので自覚しにくく、夜間に寝汗として自覚することがあります。

また咳と痰の症状がありますが、風邪でも同じ症状が見られますね。普通の風邪は一般的に2週間以内に落ち着いてきますが、2週間以上咳や痰が持続すると肺結核が疑われます。

これらの症状を放っておき進行してしまうと、症状は重くなり、血痰(けったん)や喀血(かっけつ;肺や気管支などから出血して、口・鼻から出すこと)して呼吸困難に陥る場合もあります。肺結核の進行はゆっくりのため、深刻な症状が出て診察を受けた時には、すでに重症化していることが多いのです。

早期発見・早期治療が重要になり、早めの受診が大切になります。

結核になったら?

結核を疑う症状があったら、まずはきちんと病院を受診しましょう。

結核の感染を調べるには、「ツベルクリン反応検査」という皮下注射や、「インターフェロンガンマ遊離試験」という採血検査などによって診断できます。また、発病の有無は、X線を使った画像診断や痰の細菌検査で診断をします。

昔は不治の病といわれていた結核ですが、現在は治療薬が開発され、抗結核薬などの薬を医師の指示通りに飲めば治ります。

ここで大切なのは、医師から「薬を飲むのを止めてもいい」と言われるまで、処方された通りに薬を飲み続けること。

症状が落ち着いたからと勝手に薬の飲み方を不規則にしたり、飲むのをやめてしまったりすると、結核菌が治療薬への「耐性」を持ち、薬の効かない菌「耐性結核菌」ができてしまいます。

耐性結核菌は、通常の治療よりも多種の薬を長期間服用しなければならず、場合によっては、外科的に病巣(感染した部分)を切除せざるを得ないこともあり、重症化や死亡率を高めることにつながります。

結核にならないために!

結核は空気感染によって感染・発症します。ただしこの感染と発症は本来は身体の免疫機能が防いでくれています。

しかし、ほかの病気や、加齢、不規則な生活、ストレス、疲れなどによって身体の免疫機能が低下すると感染・発病のリスクが高まります。そのため、結核の予防には日々の生活の中で十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、ストレスをためない規則正しい生活を心がけ免疫機能を高めることが重要です。

結核は周囲の人たちへの感染や発症を招く恐れが高い病気です。

自分だけでなく周りの人たちを守るためにも、定期的な健康診断を受け、疑わしい症状があれば早めに受診するようにしましょう。

執筆:井上 愛子(保健師・看護師)

 

<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

image by: Shutterstock

 

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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