ゴーンに切られた社員を叩く「自分だけは安全地帯にいる」人たち

 

(CC BY 2.0)金融商品取引法違反で逮捕されたものの、日産をV字回復させた経営手腕については未だ肯定的に報じられることも多いカルロス・ゴーン氏。しかし健康社会学者の河合薫さんは、そんな報道に違和感を抱いていると言います。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』でその理由を詳述。さらに、ゴーン氏によってリストラされた従業員に対して「自己責任」と言い切ってしまう、「自分だけは安全地帯にいる」と考えている人の多さに辟易すると記しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年12月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

リストラも自己責任?

東京地検特捜部は12月10日、カルロス・ゴーン日産前会長と、グレッグ・ケリー前代表取締役を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで再逮捕しました。

日産のクーデター説や日本政府の関与など、さまざまな憶測が飛び交っていますが、真相は明らかになっていません。経済事件として、一連の問題がどういった結末を迎えるのかは、経済の門外漢である私にはわかりません。

しかしながら、突然の逮捕劇以来、ゴーン前会長を「日産を再生させた名経営者」だの、「ミスター・コストカッター」だのと、氏の経営手腕を礼賛する報道に違和感を抱いていました。

だってゴーン氏の「日産リバイバルプラン」では、村山工場など車両組立工場3カ所、ユニット工場2カ所を閉鎖し、全世界でのグループ人員を2万1,000人削減し、購買コストを20%圧縮するために下請企業を約半分に減らし、09年のリーマンショック後も、国内外のグループで2万人の従業員を削減したのです。

結局のところ「コストカットによる企業再生は、現場の犠牲の上に成立する」という、やりきれないリアルが存在します。

そこで日経ビジネスで上記の問題に加え、この数年、フランスのルノーで過労が原因とされる自殺者が増えていることや、11年前の2007年に4ヶ月間に3人が相次いで自殺したことを取り上げ、「コストカットの後始末とは何か?という問題提起をしました。

経営者としての「ゴーン礼賛」への大きな違和感ルノーの仏国内事業所で自殺者が相次いでいるという事実

詳しくはコラムを読んでいただきたいのですが、私が言いたかったのは現場の人たちに犠牲を払わせはい、おしまい!とするな、と。リストラされ「あれは仕方がなかった」「会社のためなら」と長い時間をかけて折り合いをつけた人、それが上手くできなくて命を断つという悲しい選択に至った人のことを、ほんの一瞬でも考えたことがあるのか、と。

コストカットした人だけでなく、それを褒め称える人に問いたくて、文章を綴りました。

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