7月9日、米国は6月に発生した「日本などのタンカー砲撃事件」再発防止の為に有志連合を結成し、ホルムズ海峡付近の安全確保を目指すと発表しました。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、有志連合に参加する場合は各々に自国商船を守る義務が発生する点に触れた上で、日本が参加すべきか否かについて持論を展開しています。
なぜ日本は「タンカー防衛有志連合」に参加すべきなのか?
どうやら日本、大きな岐路に立たされているようです。何の話でしょうか?
米、イラン沖で有志連合結成へ タンカー攻撃受け
7/10(水)11:49配信
【ワシントン共同】米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は9日、イラン沖のホルムズ海峡近くなどで民間船舶の安全を確保するため、同盟国の軍と有志連合を結成する考えを示した。数週間以内に参加国を募る。
ホルムズ海峡近くなどで民間船舶の安全を確保するため、有志連合をつくるそうです。なぜ、こんなことを決めたのでしょうか?
日本などのタンカーが攻撃を受けたことに伴う措置。ロイター通信が伝えた。
(同上)
「日本などのタンカーが攻撃を受けた」からだと。6月13日に、二隻のタンカーが攻撃されました。
米国が艦船を派遣して監視活動を指揮。参加国は米艦船の警備や、自国の商船の護衛に当たる。
(同上)
ここまで聞いて、「おお、真によいことでありますな」とほとんどの人が思うでしょう。タンカーが攻撃されたら困りますから。しかし、次を読んだら、心穏やかではいられないと思います。そして、国論真っ二つになることでしょう。
トランプ米大統領は、各国がホルムズ海峡を通るタンカーを自国で守るべきだと主張しており、日本も何らかの対応を求められる可能性がある。
(同上)
トランプさんは6月24日、「日本は、自分のタンカーは自分で守れ!」という旨のツイートをしています。どうですか、皆さん。日本は、どうするべきでしょうか?私は、「日本はアメリカ主導の『タンカー防衛有志連合』に参加すべきだと思います。なぜ?トランプさんのいってることが正論だからです。
この話、きっとたくさんの人が反対することでしょう。最大の理由は、「攻撃を受けて自衛隊員が死ぬかもしれない」。わかります。私だって、自衛隊員が亡くなってほしくありません。しかし、考えてみてほしいのです。そう考えている私たちは、「自衛隊員のかわりにアメリカ軍の人が死んだ方がいい」と考えているのですよね?いえいえ、そんな風には考えません。しかし、アメリカから見たら、そういうロジックになります。
トランプさん、「日本が攻撃されたら、アメリカは第三次世界大戦を起こしても日本を守る。しかし、アメリカが攻撃されても、日本は自宅でソニーのテレビを見ていればいい」と発言をしています。もちろん、戦後日本をこういう状態にしたのは、アメリカ。「日本が二度と強くならないように」そうしたのですが。
時代はかわって、アメリカが弱くなってきた。だから、「日本も少しは手を貸してくれ」となってきた。ここで日本はどう動くかということなのです。
これ、「憲法改正しなければ何もできない」という話ではないと思います。今の憲法でも、「個別的自衛権」は認められている。だから、タンカーを防衛している自衛隊艦が攻撃されたら反撃できる。それに安保法改正で「集団的自衛権」も一部認められるようになった。だからタンカーを防衛している米軍が攻撃されたら、日本が反撃することもできるのではないでしょうか(いろいろ解釈がでるでしょうから、追加の法律が必要な可能性はありますが)?
いずれにしても、日本のタンカーを米軍が守っている。アメリカは、「全部日本が守れ」とはいいません。「日本も、自分の国のタンカーを守る『手伝い』をしてくれ」と。これから要請が来る可能性が高い。これ、「当然参加すべき」だと思います。なんといっても、「日本企業が運営するタンカーを守る」のですから。
ここで、「嫌です。日本の自衛隊員は、一人たりとも殺させません(意味=かわりに、アメリカ兵が死んでください!)」となれば、日米同盟の亀裂は、めちゃくちゃ深くなるでしょう。そうなると、尖閣、沖縄は、将来中国領になる可能性が高いです。なんといっても中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!」と宣言しているのですから。
逆に、有志連合に参加すれば、「日本は、金だけだす狡猾な国だ!」と批判はでなくなるでしょう。日本とアメリカの同盟関係は、ますます強固になり、中国が尖閣を奪うことは難しくなります。