オワコン国家日本。鳴り物入り「特区」も米中の一顧客という悲劇

reisei20190625
 

「“世界で一番ビジネスをしやすい環境”を作ることを目的に、地域や分野を限定することで、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度(首相官邸HPより)」とされる国家戦略特区ですが、その運営については様々な意見が飛び交う状況となっています。そんな中、「特区はダメ」と一刀両断するのは、米国在住の作家・冷泉彰彦さん。なぜそのように判断するのでしょうか。冷泉さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、「スーパーシティ」構想を例に上げ明らかにしています。

チャンチャラおかしい「国家戦略特区」

最初にお断りしておきますが、これから「国家戦略特区」のことを批判しますが、それは現在の政府を批判するのが意図ではありません。勿論、この問題について今の政府の対応は遅すぎるし、全く物足りない中で、日本の衰退はひたすら加速するばかりなのですが、それでも「特区をやろうとしているだけマシだとも言えます。

他の野党については、もっと特区をやれとか、これから述べるように「規制を特区に囲い込め」というような考え方とは正反対であり、遺伝子組み換えが怖いとか、新薬の副作用が怖いから治験はやるなとかいうダメダメな感情論があると、すぐに飛びついて票にしようとか既得権益を守ることで組織票を確保しようという勢力ですから、全くお話になりません。

また、現在の特区がダメなのは、それだけ岩盤規制にしがみついた既得権益とテコでも動かない旧世代の感情論があるからで、政府としてはようやくのことで、これだけの特区を通すことができているのも事実です。

そうではあるのですが、それでもダメなものはダメです。特区はダメなのです。「特区だけ規制廃止」というのは逆なのです。そうではなくて、日本経済の足を引っ張る規制はまず撤廃することが大事であって、「どうしても地域の特殊性がある」ので規制を外せないところに限って、「必要な規制をかけるというの発想の転換が必要だと思います。

例えば、スーパーシティの問題があります。

スーパーシティというのは、従来の規制を解除してAIなど先端技術を活用した未来型のまちづくりをする構想です。具体的には、内閣府のホームページによれば、

  1. キャッシュレス…ランチから買い物まですべてキャッシュレス。お得なポイントも顔認証などで一括処理。家計簿管理も、楽々
  2. 自動ごみ収集…曜日を問わずゴミ出し。センサーで満杯を感知し自動収集
  3. 自動走行・自動配送…いつでも、どこでも、自動走行車両がご案内。必要な時に必要なものを即時にお届け。宅配ボックスはもう不要
  4. 遠隔医療・介護…AIも活用し、症状の軽いうちからしっかりケア(「AIホスピタル」)。夜間の心配な急病もネットで簡単に受診。いつでも見守られ、安心を提供
  5. 行政手続ワンスオンリー…最初の手続を行えば、その後の全ての申請・手続は、個人端末からネットで簡単に処理
  6. 遠隔教育…一人ひとりに即したコンテンツを、子供から大人まで、いつでもどこでも誰にでも、ネットで必要な時に配信

といったサービスを提供するというものです。

何が問題なのかというと、まずこれは「スーパーでも何でもないということです。

携帯電話(移動体通信)が第五世代(5G)になったとして、その「遅延のほとんどない高速大容量通信」の使い道は、「スマホで動画を見る」ような次元のものではありません。そうではなくて、この技術を使って自動運転や遠隔地医療に使うというのはすでに人類共通のテーマになっています。

ですから、この「スーパーシティ」の目玉である、自動運転とか遠隔診療というのは、とにかく世界中の国と企業が実用化を目指して激しい競争をしているのです。

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