障がい者が繰り広げるチンドンパフォーマンスに未来の可能性を見た

2019-02-12 news_01
 

2018年11月10日の昼下がり、渋谷のハチ公前広場で行われた「障害のある人の学びと表現の実践交流フォーラム」に、和歌山からやってきたポズック楽団が出演。メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんは、彼らの音楽と踊りと笑いのパフォーマンスに衝撃を受け、新しい世界の可能性を感じたと言います。引地さんが見た圧巻のパフォーマンスとはどんなものだったのでしょうか?

「障がい」を「障がい」として笑い、笑いにする力強さ

爆発的な存在感はおしろいで覆われた顔の鮮やかなほほ紅だけではない。手作り楽器の滑稽さ、出で立ちと立ち振る舞いのおかしさ、そして彼ら彼女らの「芸」の迷いのなさ。すべては圧巻だった。会場は笑いとともに、その新しいチンドン屋さんの可能性に少し気圧された印象だ。文部科学省が今年度から本格的に取り組んでいる「障がい者の生涯学習」の啓もう活動の一環として東京・渋谷で開催された「障害のある人の学びと表現の実践交流フォーラム」

「東京は初めて」と登場したチンドン屋さんは和歌山市の社会福祉法人一麦会の就労継続支援B型事業所「ポズック」のメンバーであり、この事業所の生業だ。おなじみのチンドン屋さんの音楽に合わせ、派手な衣装といでたちに手作りの楽器を鳴らして踊りながら、彼らは観客の注目を集めた。

観客の多くは初めての経験で、「東京の」感覚には刺激的かもしれないパフォーマンスに障がい者とチンドン屋さんの未来の可能性を見たのは私だけではないはずだ。沖縄の三線、サックス、大きなチンドン太鼓は楽器であるが、そのほかは不用品を寄せ集めた手作りの「楽器」。バケツ、フライパン、ナベ、洗濯板、木枠、テニスラケット―。日用品が改造され、音を奏でる道具になっているところも面白いが、それを音楽として奏でる演者と、演者の良さを引き出す支援者の口上も秀逸だ。

楽しそうに踊るアスペルガー傾向の強い知的障がいの男性メンバーに三線を弾く支援者の演者が「君、どこにおんの?」と質問すると、このメンバーは戸惑った表情を見せる。「じゃあ質問代えようか、何県におんの?」。するとメンバーは「大阪!」と大声をあげる。その瞬間、ほかのメンバーはずっこける。吉本新喜劇で見られる、あの「ずっこけ」だ。「ちゃうやんか、ここは。大阪は県でもないし、ここは大阪ちゃうやん」。このやりとりに観客はどんな展開になるか、ドキドキ。「ここは都や、県でもないし府でもない。どこやろ?」。メンバーは大きな声で「と!」と答え、一同またずっこけ。知的障がいだから、おそらくは計算してぼけてはいない。それは「障がい」なのだが、そこを笑う、力強く、笑いにする。このシーンに観客は笑いながらも圧倒されていた。

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