【書評】甲子園ウォッチャーが専門家に聞いた、継投の一番の利点

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まもなく始まる令和初の全国高校野球野球選手権。近年はかつてのような絶対的エースにすべてを任すというケースは激減し、巧みな投手継投で試合を勝ち抜く采配が主流となっています。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが取り上げているのは、殿堂入りメルマガ「大利実のメルマガでしか読めない『中学野球』」の著者が上梓した高校野球継投論。読めば夏の甲子園が更に楽しく観戦できること請け合いの良書です。。

偏屈BOOK案内:大利 実『高校野球継投論』

sbt20190801高校野球継投論
大利 実 著/竹書房

第101回全国高校野球野球選手権(夏の甲子園)に出場する全49校が出揃った。

継投を制するものが甲子園を制す。高校野球継投論 もう「エースと心中」では勝てない。継投の適切なタイミングや複数の投手を育てる方法、データに沿った継投術、投球障害を予防する球数等、継投の極意と重要性を7人の名将とトミー・ジョン手術の権威、サイバーメトリスクの専門家らが語る 大利 実

……表紙カバー半分以上の帯情報がこれ。

高校野球は大正、昭和、平成、令和と4つ目の元号を迎えた。木製バットから金属バットに、甲子園のラッキーゾーンの撤去、女子マネのベンチ入り、ベンチ入りメンバーの増加、トレーニングの進化で投打ともにパワーアップ。140キロも珍しいことではなく160キロ投手も登場。大会本塁打数も2017年に新記録。戦法にも変化が見られ、「エースと心中という言葉は消えつつある

猛暑の中での連戦、パワーアップしているバッティングに対応するには、一人では厳しい。投げ過ぎによる投球障害が大きな問題になる。1978年から2018年まで5年ごとに調べたデータによれば「先発投手のイニング割合」「先発投手の完投割合は下がり続けている。必然的に継投が増える。監督としては「お前(エース)に任せた」ほうが楽だが、そうはいかなくなったのが高校野球だ。

監督の采配を考えたとき、継投ほど難しいものはない。その試合に負けたとき「なぜ代えなかったんだ」「なんで代えたんだ」と責められる。引っぱった結果と継投した結果を比べることはできないので、どちらが正しかったかは結果論しかない。その結果は目に見えて分かるだけに、周りからは突っこまれる。素人でも「あそこの投手起用が……」と言えるだけに、負けた監督は気の毒だ

現代の高校野球では「継投巧者でなければトーナメントを勝ち抜けない。もし球数制限が導入されても、継投重視の監督ならスムーズに対応できる。継投で結果を出してきた名将たち、山梨学院・吉田洸二、創成館・稙田龍生、近江・多賀章仁、仙台育英・須江航、健大高崎・青柳博文、東海大相模・門馬敬治ら。セイバーメトリクス専門家、トレーナーにも「継投必勝法を聞く

山梨学院の吉田洸二監督は、長崎県立青峰の監督として春夏5度、甲子園出場、2009年センバツ優勝。7月24日、山梨学院は4年連続の甲子園出場を決めた。今まで甲子園で7試合戦っているが、すべて継投策をとる。そこには絶対的な根拠があるはずだ。先発投手の代え時が来ているのが前提になるが、追い込んでからの勝負球を持たないピッチャーの場合こういう継投を使うのだという。

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