4年前、ラグビー日本代表が強豪南アフリカ相手に勝ち星を上げた背景に、優れた「メンタルコーチング」があったとされていることはご存じでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、当時チームのメンタルコーチを務めていた園田学園女子大学の荒木香織教授によるセミナーの一部を抜粋し、メンタルトレーニングがビジネスの世界でも応用できる優れた指導法であることを解説しています。
スポーツ指導者に求められること
「前ラグビー日本代表メンタルコーチが明かす世界で勝負できる心の鍛え方」と題するセミナーを聞きました。講師は、「スポーツ心理学」を専門とする園田学園女子大学の荒木香織教授です。4年前のラグビーワールドカップで、強豪の南アフリカを破ったあの日本代表のメンタルコーチをされていました。TVでも取り上げられましたので、覚えている方もいるでしょう。日本代表は、このメンタルコーチがいたことも強くなった要因だと言われています。いったい荒木コーチは、どんなメンタルトレーニングをしたのでしょうか。興味がありますよね。
お話を聞くと、スポーツの指導者は、メンタルトレーニングについてしっかりと学ぶ必要があることが分かります。ここのところ、東京五輪を前にして、指導者のパワハラが問題になっていますがこれは、日本のスポーツ界が長年抱えてきた体質です。
スポーツは、「体育」として学校の授業に取り入れられてきました。教育の一環として、精神力を鍛える面もあるようです。しかし、その日本的な指導法が、必ずしも正しくはないととらえられるようになって来ました。
そして、この体質を変えるチャンスが来ています。そのために必要なのが、メンタルトレーニングを始めとする科学的な指導法です。荒木コーチは、その著書『ラグビー日本代表を変えた心の鍛え方』(講談社+α新書)の中で、こう言っています。
日本のスポーツ指導者
日本のほとんどすべての競技のチームにはメンタルに関する専門家がいなかったのではないか。その最大の理由は、指導者がメンタルトレーニングを軽視していることだ。選手のメンタルのことは自分がいちばん知っていると思い込んでいる。だから、その必要性を認めない。元選手で現場を見ている自分の方が分かっている、と考えている。
そして、
日本では、選手が引退した翌日から監督やコーチになるケースが少なくない。しかし、選手としてパフォーマンスするのと、選手をコーチすることは本来、まったく別のことだ。
体罰が起きるのも、監督がどうしたら選手のモチベーションを上げられるのか知らないことに原因がある。
鋭いところをついていますね。つまり、指導法を学んでいない元選手がコーチをするのは間違っているということです。まさにこれが日本のスポーツ界の現状ではないでしょうか。
確かに元選手は技術的なことは詳しいです。だからといって、選手のメンタルを強くしたり、モチベーションを上げたりすることについて学んでいるわけではありません。所詮、我流です。ですから、いま日本のスポーツ界にはメンタルトレーニングを学んだ指導者が求められています。あの大坂なおみ選手が強くなったのも、メンタルコーチの存在があったからです。
そして、スポーツ指導者は、必ずしも一流選手である必要はありません。しっかりと理論を学んだ人が指導者になるべきです。