先日開催された、アップルの開発者会議「WWDC 2019」。「Mac Pro」の新型やiPad専用OS「iPadOS」の発表など充実の内容でしたが、なかでも大いに話題となったのが「iTunes終了」でした。今年も現地で取材にあたったケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、そんな大盛り上がりだった「WWDC」の模様を、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』にてさっそくレポート。くわえて、iTunes終了によって生まれた、「ダウンロード配信終了」という“勘違い”がいかにして生まれたのかという、その背景にも迫っています。
世界に勘違いをもたらせた「ダウンロード配信終了」報道━━「iTunes」はなくなるが「iTunes Store」は残る
6月3日(現地時間)より、アメリカ・カルフォルニア州サンノゼでアップルの開発者向け会議「WWDC」が開催された。2時間を超える基調講演では、tvOS、iOS、iPadOS、watchOS、macOSなどのアップデートが語られたほか、Mac Proの新製品も披露されるなど、かなり濃い内容であった。
そんななか、日本では「iTunesがなくなる」という点が注目を浴びていたようだ。一部では「iTunesがなくなり、ダウンロード時代が終焉を迎える。アップルはストリーミング配信にシフトする」と報道。これに引っ張られる形で、他のメディアも「ダウンロード配信が終了する」と報じた。
しかし、実際はiTunesのアプリがなくなるだけで、ダウンロード配信機能は残る。また、ユーザーが購入した楽曲データやリッピングしたデータもそのまま「Apple Music」アプリに継続される。
では、新しい「Apple Music」アプリで楽曲を購入するにはどうしたらいいのか。筆者はWWDCの会場で、新しい「Apple Music」アプリの挙動を確認することができた。アプリは、どちらかといえばiPhoneのミュージュクアプリに近く、Apple Musicのおすすめ楽曲が全面的に表示されるデザインとなっている。
ここ最近、Apple Musicでも著名なアーティストの楽曲を聞けるようにはなってきたが、一方で、いまだにストリーミングサービスに配信していないアーティストも多い。そうした楽曲を聴くには、ダウンロードサービスから購入する必要がある。新しい「Apple Music」アプリでは、画面上部のメニューの中から、「iTunes Store」という項目を選んで、そこから購入、ダウンロードすることになる。
つまり、macOS Catalinaから、iTunesというアプリはなくなるが「iTunes Store」は残り続けることになる。すなわち「iTunes」という単語が全くなくなると思いきや、微妙に生存するというわけだ。
今回、「ダウンロード配信時代が終焉する」という間違った報道は日本のみならず、世界中に広まったようだ。基調講演で「ダウンロード販売は継続する」とひとことでも触れていれば、こんなことにはならなかったのに。
いずれにしても、秋にリリースとなるmacOS Catalinaが一般に広まれば、そうした誤解もすんなりと解けることだろう。