現役医師が警告。人間は「6時間睡眠」でもまったく足りていない

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睡眠時間が短いと身体や心に大きな影響を及ぼすということはよく知られていますが、具体的にはどんな影響があり、また何時間睡眠することが望ましいのでしょうか。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田安春先生が、睡眠不足による弊害と、確保すべき最低の睡眠時間について、その根拠も含めて解説しています。

睡眠の最新医学。眠らない現代人と高齢者

年を重ねると睡眠時間が短くなります、とご老人の方々が言われるのをよく聞きますね。でも、高齢者の短い睡眠時間は健康的なのでしょうか。結論から言うと、短い睡眠時間は健康的ではありません。高齢者であってでもです。私は、高齢患者さんにも睡眠時間は最低7時間は確保するようにお勧めしています。今回のチャプターではその理由についてご紹介します。

現代社会では人々が眠れなくなっています。24時間365日、テレビは番組を放送しています。家電製品にLED電球が普及しています。LEDの青い光が網膜に作用すると、脳にシグナルを送り、睡眠を防ぎます。車社会によって、毎朝の一般道路での騒音はますますひどくなっています。仕事や学校は依然として早い時間からスタートします。これらによって遅く寝て早く起きるのが当たり前のようになっています。

人間の脳内には体内時計があります。体内時計の1日は24時間15分程度。つまり、体内時計は24時間周期ではなく、毎日約15分遅く進むリズムとなっています。そのため、人間が眠る時間帯は体内時計のみに従うと徐々に遅れていくので、毎日この時計をリセットしなくてはなりません。リセットのためには、朝は日光に当たって体内時計をリセットする必要があります。

大切な睡眠

進化の過程で、睡眠は非常に重要な機能として温存されており、ほとんどすべての動物が睡眠をとっています。睡眠のフェーズには2つの種類があります。ノンレム睡眠とレム睡眠です。人間の睡眠では、90分間でこの2つのフェーズが1サイクルを成しており、これが繰り返されています。睡眠の前半ではノンレム睡眠が長く、後半ではレム睡眠が長くなっています。私たちが夢を見るフェーズはレム睡眠です。

ノンレム睡眠とレム睡眠の役割はそれぞれ異なっています。ノンレム睡眠には記憶を助ける働きがあります。日中に学習した内容は脳の奥にある海馬に一時的に貯蔵されますが、ノンレム睡眠によって大脳全体にうまく配分されて長期の記憶として保持されます。レム睡眠は、記憶された知識を様々な組み合わせで結合することにより、クリエイティブなイノベーション的発想をもたらします。

睡眠時間が短くなると、睡眠の役割が十分に果たされなくなります。ノンレム睡眠が浅くて短いと、昼間の間に学習した内容が長期記憶として保存されなくなります。レム睡眠が短いと、クリエイティブな発想を生み出す可能性が低くなります。これらは受験生や頭脳労働者にとっては大変重要なことです。

また、睡眠が浅くて短くなると体や心の健康に害を及ぼします。がんや心血管病、肥満、糖尿病などの病気になるリスクが高くなります。また、うつ病や不安神経症、そして認知症のリスクも高くなります。小児の場合、ADHDと似た症状をもたらします。心理的トラウマを受けた人の場合、レム睡眠が短いと、PTSDになるリスクが高まります。

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