スーパーでは100円前後で売られているツナ缶ですが、いま、1缶5,000円を超える高級品が話題となっています。その差、実に50倍。一体何が異なるのでしょうか。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、「 贈り物にツナ缶を」という新しい発想を生み出した企業の戦略・戦術を分析しています。
大衆品の高級化
今号は、人気の高級ツナ缶を販売している企業を分析します。
● モンマルシェ(贅沢ツナ缶・さば缶専門店)
戦略ショートストーリー
ツナが好きな方をターゲットに「ツナへの想いとこだわり」に支えられた「上品で上質な味わいが楽しめる」、「贈り物として喜ばれる」等の強みで差別化しています。
素材や漬け込み油などに徹底的にこだわった高級なツナ缶という新たなポジションを開拓することで、本物の味わいを提供し、顧客からの支持を得ています。
■分析のポイント
静岡県はマグロ類缶詰生産量が99.9%のシェアをとっていることをご存知でしょうか。すごい数字だと思いますが、私は「モンマルシェ」のHPを見て初めて知りました。
静岡の名品と言えば、「お茶」というイメージが強いですし、静岡のお土産の定番と言えば、「うなぎパイ」という印象です。恐らく、静岡とツナ缶がイメージとして結びつく県外の方は少数派だと思われます。そういった中で、ツナ缶の高級ブランド化の取り組みは面白いと思います。
ツナ缶は、スーパーなどで、1缶100円前後で販売されている大衆品です。どこでも買える100円前後で売られているものはご当地のお土産にはならないでしょうし、ギフトにもなりえないでしょう。
そこで、モンマルシェは「オーシャンプリンセス」というブランドを立ち上げ、ツナ缶を贅沢品として扱い、高級化することで、ギフト化につなげています。そして、販路をリアル店舗は静岡県内に限定することで、お土産化にもつなげています。
このような打ち手により、もともとツナ缶をギフトとして贈るという発想のなかった消費者に高級なツナ缶の存在を知らしめていったわけです。さらに、1缶5,400円の極上ツナ缶で注目を集めましたが、これも高級ツナ缶ブランドとしての地位を確立するために有効な打ち手と言えるでしょう。
モンマルシェのツナ缶と同様に最近、高級化している大衆品があることを思い出しました。それは、食パンです。食パンも一斤100円前後で販売されている大衆品ですが、その食パンを約1,000円で販売する「1,000円食パン」が人気になっています。こちらも高級化することで食パンをお土産やプレゼントとして購入する方を増やしているようです。
「高級ツナ缶」も「高級食パン」も高級化に成功している事例です。どちらもプレゼントされて嬉しいと思う存在になっていることがポイントと言えるでしょう。
今後の「モンマルシェ」の動きに注目していきたいです。